声の保護と多言語化に取り組む新団体が発足 生成AI時代の声優の権利保護と海外展開を視野に

2025年11月19日、一般社団法人 声の保護と多言語化協会が都内で設立会見を開き、日本の声優やアーティストの声を保護しながら、多言語化技術を活用した海外展開のあり方について説明した。
無断生成AIによる海賊版問題への対策を含め、声の権利を守る枠組みづくりが始動した形だ。
声優の声を保護し多言語展開を支援する新協会が始動
19日の会見には、「それいけ!アンパンマン」でメロンパンナ役を務める声優のかないみか氏が登場し、自身の声を使った多言語化の取り組みについてコメントした。
同協会は、声優やアーティストの音声データを正規に保護しながら、30カ国以上の言語へ変換できる多言語化技術を活用することで、海外展開の新たな形を創出することを目的としている。
また、無断生成AIによる音声の海賊版が課題として挙げられており、権利保護の仕組みづくりも協会の重要なテーマとなっている。
会見では、かない氏がその場で録音した音声をAIが英語やフランス語へ変換する実証が行われた。
かない氏は、「私たちの声をこういう形で守っていただけて、権利をもってやっていただければ、AIとうまく融合したらみんなが助かることにつながるんじゃないかなと思う」と期待を示した。
また、人気声優の梶裕貴氏がVTRで登場し、多言語化技術について「より多くの方に世界中で、言葉の壁をこえて、日本の声優文化、魅力を届ける機会になると期待しています」と評価した。
洋画吹き替えで知られる山寺宏一氏もシステムの可能性に触れ、「オリジナルの方がAIを使って変換したものに負けないような日本語吹き替え版を作る。負けないような演技をして、日本語で楽しむ皆さんに支持していただけるようにならなきゃいけないなということも感じて、ますます気合を入れて声優の仕事を極めなきゃと思いました」と語り、技術進化が声優のさらなる研鑽につながるとの考えを述べた。
声の保護と多言語化が拓く新たな市場機会
新協会の発足は、声優の権利保護と多言語化を進めるうえで、適切なデータ運用の枠組みを整える動きとして位置付けられるだろう。
特に、正規ライセンスに基づく音声利用のルールが整理されれば、制作会社や配信事業者が多言語展開を進めやすい環境が期待できる。
業界横断で手続きが標準化されることで、海外展開に向けた調整作業の負担軽減にもつながる可能性がある。
一方で、生成AIによる無断音声生成のリスクは依然として残り、権利管理や監視の仕組みが追いつかなければ、協会の枠組みが機能不全に陥る懸念もある。
また、多言語化技術が普及すれば、従来の吹き替え文化との摩擦が生じ、声優の個性の扱いを巡る議論が続く可能性も否めない。
今後は、音声データを正規ライセンスに基づいて扱うためのガイドライン整備が進むことで、声優のブランド価値がより明確に可視化されそうだ。
技術開発と社会的ルール形成を並行して進められれば、音声を資産とする新たなビジネスモデルが広がり、日本の声優文化が国際市場で一段と存在感を高める展開も期待できるだろう。
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