米SECが検査優先事項を転換 暗号資産企業への重点監督をリスト外に

2025年11月17日、米証券取引委員会(SEC)は最新の検査優先事項を公表し、暗号資産関連企業への重点監督をリストから外した。
米メディアの報道とSECの公表文書から判明した内容であり、監督の重点が見直されつつある動きとして受け止められている。
SEC、暗号資産企業の重点監督を優先項目から除外
SECの検査局(Division of Examinations)は17日、現在の会計年度(2025年10月〜2026年9月)における検査の優先事項を示し、その中で暗号資産関連サービスを独立した監視項目としては挙げなかった。
今回の文書では、受託者責任(※)や行動基準、資産保管、そして顧客データのプライバシー要件など従来の監督領域を中心に据えている。
過去数年の年次声明では、デジタル資産の価格変動や暗号資産関連の活動に焦点を当てた項目が設けられていた。
しかし今回、その項目が見送られたことから、業界では監督姿勢の変化と受け止める向きもあるとみられる。
背景には、トランプ政権が進める暗号資産推進の政策転換があるとされ、前政権の厳格なスタンスからの方向転換が鮮明になったとの指摘もある。
SEC広報は「今年度の優先事項は、SECの検査官が重点的に取り組む全ての分野を網羅的に列挙したものではない」と強調している。
また、ポール・アトキンス委員長は「検査は当委員会の使命を果たすうえで重要な要素だが、『揚げ足取り』のためのものになるべきではない」と述べ、透明性向上の意義を強調した。
※受託者責任(フィデューシャリー・デューティー):投資家の利益を最優先して行動する義務。
監督項目外しが暗号資産企業に与えるメリットと課題
SECが暗号資産企業への重点監督を優先項目から外したことは、業界側にとって一定の好影響をもたらすとみられる。
独立した監視対象として明示されなくなったことで、政策面の圧迫感が和らぎ、各社が新規投資や事業計画を進めやすい環境が整う可能性がある。
一方で、この変更には注意点も残るだろう。監督項目から外れたことが「規制負荷の緩和」と誤解されれば、内部統制の強化が後回しになる恐れがあるほか、SEC自身が“優先項目でなくても監督は継続する”と受け止められる発言をしている以上、企業が求められる遵守水準は依然として高い水準にあるとみられる。
むしろ、重点項目に載らない分だけ、自主的なガバナンスがより厳しく問われる局面が続きそうだ。
今後の展望としては、今回の判断が一定の追い風となり、サービス拡張や新しい事業領域に踏み出す企業が増える可能性がある。
一方で、監督が弱まったとみなすのは早計であり、企業側には政策の変化を活かしつつ内部管理を自発的に引き上げる姿勢が求められる局面が続くと予想できる。
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