AIが乗合ルートを自動設計 トヨタ・コニック・プロが基山町で交通実証

2025年11月15日、トヨタ・コニック・プロ株式会社(東京)は、佐賀県基山町で予約制乗合型タクシー「らくのるきやま」向けにAIオンデマンド相乗り運行システムを提供すると発表した。
公共交通空白地帯における移動課題の解消と、町民の移動利便性向上を図る取り組みと位置づけられている。
基山町でAI相乗り運行の実証開始 高齢者支援と地域回遊性向上へ
トヨタ・コニック・プロは、基山町が進める予約型乗合タクシーの実証実験に配車管理システム「トヨタコニックライド」を提供した。
同システムは公共交通空白地帯での町内の回遊性向上や交通課題の解消を目指して開発された配車管理システムで、今回はラインナップのうちAIが乗合ルートを自動設計し、運行効率の最大化を図る「AIオンデマンド相乗り運行システム」が採用されている。
利用者はスマホやLINEから自宅と目的地を結ぶ移動を予約でき、当日15分前まで受け付ける柔軟性を備える。
乗合が発生した場合でも到着時間を優先するアルゴリズムが組み込まれ、病院通院など時間厳守のケースにも対応する構成だ。
また、リマインド通知や予約履歴の確認機能も備えており、予約や乗車状況を把握しやすい構成となっている。
実証は2025年9月〜11月の期間で行われ、運行主体は基山タクシーと福山コンサルタントが担当する。
町内全域を対象に、1台あたり3人乗りの車両2台で運行する実証実験となる。
トヨタ・コニック・プロは、モビリティ領域から広がる持続可能な未来の実現と「一人ひとりの幸せ」への貢献を掲げ、今回の実証に協力している。
AI交通が地域にもたらす利点と課題 持続的運行の鍵は需要創出
AIを活用した乗合運行は、人口減少が進む地方にとって大きな効果がありそうだ。
採算性が低い地域でも効率的なルート生成ができ、少ない車両で広いエリアをカバーできるため、移動の選択肢を確保しやすくなると考えられる。
予約データの蓄積により、生活圏の動線を可視化し、地域サービスの改善につながる展開も期待できる。
一方で、安定した利用者数を確保できなければ、AI運行の導入が単発の実証に留まりかねない。運行主体である地元タクシー会社との連携が持続的に機能するかどうかも重要な視点になるだろう。
今後は、地域の医療機関や商業施設と連動した移動需要の創出が鍵を握るとみられる。
生活圏全体での移動目的が増えれば、乗合運行の利用頻度が自然に高まり、事業モデルとしての安定性も増していくはずだ。
自治体と事業者がデータ分析を基盤に交通政策を調整できれば、効率性と公共性を両立させた運行体系へ近づく展開が期待できる。
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