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    シンガポール中銀 トークン化MAS債実証とステーブルコイン規制

    2025年11月13日、シンガポール金融管理局(MAS)は、2026年にトークン化した「MAS債(MAS bills)」の発行実験を行い、あわせてステーブルコインを規制する法律を導入する計画に言及した。

    目次

    MASが2026年にMAS債の実証実験 ステーブルコイン規制枠組みも検討

    シンガポール中銀であるMASは、トークン化された「MAS債(MAS bills)」の発行実験を2026年に行う計画を示し、トークン化金融エコシステム構築に向けた取り組みの一つとして位置づけている。
    発表はMASのチア・ダー・ジウン氏がシンガポール・フィンテック・フェスティバルの基調講演で述べたもので、同氏は「トークン化はすでに始動している。だが、資産担保型トークンが脱出速度に達したと言えるだろうか。まだだ」と現状を評価した。

    MASが取り組むトークン化施策は、MAS債の実証にとどまらない。
    現在、同局はトークン化資産を用いた決済の実証を進める「BLOOM」イニシアチブを支援しており、トークン化した銀行負債やステーブルコインを組み込んだ決済フローの検証が進んでいる。

    さらに、DBS銀行やOCBC銀行など、国内の主要銀行3行がシンガポールドル建てホールセール型CBDC(※)を用いて翌日物資金取引を完了させたことも明らかになった。
    さらに、MASは今後、CBDCによる決済を前提としたトークン化MAS債の検証にも踏み込む方針を示した。

    規制面でも動きが出ている。MASは今週中にトークン化資本市場商品の規制ガイドを公表する予定で、同時にステーブルコインの準備資産や償還要件を定める規制法の導入も議論を進める。
    こうした整備は、国際的なルール形成との整合を図る狙いもあり、同局はイングランド銀行やタイ中央銀行、ドイツ連邦銀行など各国の中央銀行と協力し、クロスボーダー決済の相互運用性を高める実験も進めている。

    ※CBDC:Central Bank Digital Currency(中央銀行デジタル通貨)の略称で、中央銀行が発行する法定通貨をデジタル化したもの。

    規制整備と国際協調が左右する市場の行方

    トークン化金融インフラが整備されれば、シンガポール市場の効率化が大きく進むと予想できる。
    とりわけ、MAS債やホールセール型CBDCを使った決済実証が進展すれば、即時性や透明性が向上し、機関投資家のバックオフィス負荷が軽減される可能性がある。
    さらに、ステーブルコイン規制法の導入によって準備資産の健全性が担保されれば、資産担保型トークンの信頼性向上にも寄与すると見られる。

    一方で、トークン化市場の拡大にはコスト面の課題もある。
    発行体には厳格な準備資産管理や償還プロセスの設計が求められ、運営負担は増す見通しだ。
    また、取引が国境をまたぐケースが増えれば、各国で異なる規制への対応が必要となり、調整作業が複雑化する懸念も残る。
    国際協調の枠組みがどこまで整うかは、イノベーションと規制のバランスを左右する重要な要素となりそうだ。

    今後は、MAS債やCBDCを用いた決済基盤が実務の現場にどの程度適合するかが注目できる。
    実証が順調に進めば、取引プロセスの自動化やリスク管理の高度化につながる可能性がある。
    一方、制度面の調整が遅れれば、導入のペースが鈍るリスクも残り、トークン化金融の発展は段階的な進行となるとみられる。

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