総務省、ファイル共有ソフトの不適切利用による著作権侵害に注意喚起 発信者情報開示請求の急増を受け

2025年11月7日、総務省は国内で急増するファイル共有ソフトの不適切利用による著作権侵害トラブルを受け、注意喚起ページを公開した。
発信者情報開示請求や損害賠償請求の事例が急増しており、発信者情報開示制度の適切な運用に支障を来しつつあるとの声が寄せられているという。
発信者情報開示請求が急増 9割超が著作権侵害関連案件に
総務省が新たに公表した調査結果によれば、発信者情報開示請求の件数は急激な増加傾向にある。
令和6年にプロバイダへ申し立てられた総数154,484件のうち、約95.6%にあたる147,746件が、特定のファイル共有ソフトを用いたアダルト動画の著作権侵害(※)に関する案件だったという。
これらの請求の大半は任意請求であり、実態はさらに多い可能性が指摘される。
多くの利用者が「ダウンロードだけなら問題ない」と誤認している点も深刻だ。
ファイル共有ソフトの多くは、ダウンロードと同時に自動アップロードが行われる仕様のため、意図せず著作権を侵害してしまうケースが後を絶たない。
結果として、利用者はIPアドレスを特定され、発信者情報開示請求や損害賠償請求の対象となる事案が急増している。
総務省は発信者情報開示制度運用への支障を回避する目的で、利用者向けの注意喚起ページを新設した。
利用者の間で違法性の認識が十分に共有されていない状況が続いており、誤認を正すことが結果として制度への過度な負荷を抑えるうえでも重要だと位置付けているとみられる。
※著作権侵害:著作権者の許諾なく著作物を利用する行為。
利用者保護と制度運用の両立へ求められる次の一手
総務省がファイル共有ソフトの不適切利用に注意喚起を行ったことには、一定のメリットがあるだろう。
特に、ダウンロードと自動アップロードが連動する仕組みを理解しない利用者も多く、今回の呼びかけが認識のズレを補正する契機となり得る。
こうした理解が広がれば、著作権侵害を巡る開示請求や損害賠償の急増に一定の歯止めがかかる展開が考えられる。
一方で、デメリットも浮かび上がる。
開示請求が特定分野に集中する構造が続けば、制度を担う側の負荷は依然として高いままで、注意喚起だけでは利用者行動が大きく変わらない可能性がある。
結果として、プロバイダや司法手続の現場では処理能力を上回る案件が積み重なる懸念が残りそうだ。
今後は、注意喚起に加え、ユーザーが「どこから違法か」を直感的に判断できる仕組みの整備が重要になるだろう。
自動アップロードを抑制する機能の標準搭載や、警告表示の強化といった技術的対応が進めば、トラブル件数が徐々に減少へ向かうとみられる。
関連記事:
集英社が生成AIサービスに抗議 作家の尊厳守る「厳正対応」を表明

ユニバーサル ミュージックとUDIO、AI音楽制作で提携 著作権訴訟を和解しライセンス契約締結












