PFU、AI×X線でリチウムイオン電池を検知　廃棄物火災を未然に防止

2025年10月31日、株式会社PFUは、廃棄物処理施設に混入するリチウムイオン電池をAIとX線技術で検知するシステム「Raptor VISION BATTERY」を発表した。
廃棄物火災の主因をAIで特定し、安全性と稼働効率を両立させる狙いだ。

廃棄物処理の火災をAIで防ぐ　PFUが「Raptor VISION BATTERY」提供開始

PFUは、世界シェア首位のイメージスキャナー技術を応用し、廃棄物処理施設向けAI検知システム「Raptor VISION BATTERY」を開発した。
X線撮影によって得られる透過画像をAIが解析し、一般・産業廃棄物に混入したリチウムイオン電池を94％の精度で特定する。
検知後はプロジェクターで位置情報を作業者に通知し、リチウムイオン電池の除去を支援する仕組みとなっている。

この技術は、IHI検査計測のX線装置「LiB検知システム」に採用されており、自治体をはじめ多くの施設の安定稼働への貢献が期待されている。
背景には、リチウムイオン電池が原因の火災事故が年間1万件以上、被害額100億円規模にのぼるという現実がある。
モバイルバッテリーや電子タバコなど電池内蔵製品の廃棄増加により、火災リスクは年々深刻化している状況だ。

PFUはこれまで町田市などの実証実験で成果を上げ、2025年1月には国立研究開発法人NEDOの「Li-ion Battery 2025」プログラムで全国1位を獲得。
プラごみでは検知率100％・誤検知率0％という結果が得られるなど、高い認識精度が確認されている。
同システムではデュアルエナジーX線（※）による材質識別やAIモデルの再学習機能を備えており、多様な廃棄物への対応力向上が図られている。

※デュアルエナジーX線：異なるエネルギーのX線を照射し、透過度の差から物質の種類を識別する技術。

AI検知技術が変える廃棄物処理の未来

PFUの「Raptor VISION BATTERY」は、AIとX線による高精度検知で廃棄物火災を未然に防ぐ画期的な技術となり得る。
最大のメリットは、従来の人手や金属探知機では見落としがちなリチウムイオン電池を的確に検出し、年間1万件超の火災を防止できる可能性があることだろう。
加えて、検知データを活用した廃棄物発生傾向の可視化は、行政や事業者にとって効率的な運用計画立案の基盤となると考えられる。

一方で、X線装置の維持費やAIモデルの再学習コストといった導入ハードルは依然として高いとみられる。
特に中小施設では、技術人材の不足や誤検知時の対応責任など、運用面での課題が顕在化する可能性がある。
制度的にも、安全基準や責任範囲を明確化する法整備が追いつかなければ、普及の足かせとなるかもしれない。

今後は、政府や研究機関による標準化支援を通じて、AI検知システムが廃棄物処理の“共通装備”になると予測できる。
PFUが蓄積するスキャンデータの活用により、危険物の検知だけでなく、AIによる素材識別や自動分別へと発展する展開も見込まれる。
AIと現場技術の融合が進めば、火災ゼロ社会の実現も現実味を帯びてくるだろう。

PFU プレスリリース

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