金融庁、暗号資産ETFを原資産とするCFDなどデリバティブ取引に否定的見解

2025年10月31日、金融庁は、海外で組成された暗号資産(仮想通貨)ETFを原資産とするデリバティブ商品の取り扱いについて、「望ましくない」との見解を公表した。
日本国内向けの規制環境を踏まえた方針である。
海外暗号資産ETF原資産のデリバティブ取扱いを否定
金融庁は10月31日、金融商品取引業等に関するQ&Aを改訂し、問6として「海外で組成された暗号資産ETF(※1)を原資産とするデリバティブ商品の顧客提供」についての考え方を明示した。
改訂文書では、現状日本国内では「暗号資産ETF」の組成・販売が承認されておらず、海外で組成されたものを原資産とするデリバティブ商品を提供することは、投資者保護という観点で環境整備が十分とは言えないと指摘している。
なお、英金融サービスプロバイダーIGグループの日本拠点であるIG証券は、9月30日に米資産運用大手ブラックロック(BlackRock)が組成したビットコイン現物ETF「i シェアーズ ビットコイン トラスト ETF(IBIT)」およびイーサリアム現物ETF「i シェアーズ イーサリアム トラスト ETF(ETHA)」を原資産とする差金決済取引(CFD ※2)を国内で提供開始している。
金融庁はこのような提供に対し、たとえ登録業者であっても取り扱いは「望ましくない」と明言しており、国内投資家が対象となる取引の安全性に懸念を示している。
※1 ETF:Exchange Traded Fundの略。株式や債券、複数の資産をまとめて運用・上場し、証券取引所で売買される。
※2 CFD(差金決済取引):実物資産を保有せず、売買価格の差額を決済対象とする金融派生商品の一種。
慎重な規制の先に見える段階的解禁
金融庁が示した見解は、短期的には投資家保護の観点から大きな効果をもたらすとみられる。
未承認のETFを介した投資を抑制することで、制度的な裏付けを欠いた高リスク取引による損失を回避できるほか、国内市場の安定性確保にもつながる可能性がある。
特にCFDなどレバレッジ型商品の拡大を牽制する点では、投機過熱を抑える安全弁として機能するだろう。
一方で、海外市場との乖離は拡大するおそれがある。
米国や欧州では暗号資産ETFの上場を契機に機関マネーが流入しており、日本だけが規制で足踏みすれば、個人投資家の関心が海外市場へ向かう展開も想定できる。
また、関連業者にとっては新たな商品開発や流動性確保の機会を逃す懸念も残る。
今後は、国内制度の整備が進むかどうかが焦点となりそうだ。
暗号資産ETFの法的位置付けが明確化され、リスク説明や顧客適合性審査の基準が整えば、段階的な解禁が検討される可能性もある。
金融庁としても、投資家保護とイノベーション促進のバランスを見極めながら、慎重な調整を続ける局面が続くだろう。
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