イーサリアム財団、機関向け新サイトを公開 金融オンチェーン化を推進

2025年10月30日、スイス拠点のイーサリアム財団(Ethereum Foundation、EF)は、開発者や金融機関、企業リーダーに向けた新ウェブサイト「Ethereum for Institutions」を公開した。
オンチェーン導入を支援する情報ポータルとして、企業利用の拡大を後押しする狙いがある。
大手企業事例やL2情報を網羅 金融機関の導入支援を明確化
EFが新たに公開した「Ethereum for Institutions」は、企業や組織がイーサリアムを活用して金融インフラを構築するための包括的情報ハブである。
声明では「イーサリアムはオンチェーン経済の中立で安全な基盤として機能しており、110万人以上のバリデーター(※)に支えられ、10年以上の稼働実績を有する」と強調した。
サイト内では導入事例が紹介され、イーサリアム上で数十億ドル規模の資産運用や決済が実現していることが示されている。
また、スケーラビリティ面では、レイヤー2(L2)ソリューションが総額500億ドル超の価値を担保し、低コストかつ高スループットの実行環境を提供していると説明された。
さらにEFは、プライバシー保護技術の進展にも言及。
ゼロ知識証明(ZK)、完全準同型暗号(FHE)、Trusted Execution Environments(TEEs)を活用し、コンプライアンスと透明性を両立する仕組みを開発していると述べた。
また、トークン化資産(RWA)やステーブルコインにおける優位性も強調。RWAの75%以上、ステーブルコイン供給量の60%以上がイーサリアム上で発行・流通しており、金融市場のデジタル化における中核的な役割を果たしていることを示した。
※バリデーター:ブロックチェーンの取引を検証・承認し、ネットワークの安全性を維持するノード運営者。
新サイト「Ethereum for Institutions」
透明性と効率性を備えた金融構築へ 導入拡大の鍵は信頼性
今回のサイト開設により、企業がイーサリアム上で金融サービスを構築する道筋がより明確になった点は大きなメリットといえるだろう。
RWAやステーブルコイン、DeFi(分散型金融)など、既存金融とブロックチェーンの橋渡しを行うプロジェクトが拡大しており、イーサリアムがその主要な土台として機能していく可能性が高い。
オープンで相互運用可能な設計により、取引効率の向上や運用コストの削減が進む展開も予想できる。
一方で、課題も少なくない。
まず、企業の既存インフラとの統合や法規制への対応、データ保護の確立など、導入時のハードルは依然として高い。
特に、L2やプライバシー関連技術が急速に発展しているとはいえ、実運用段階での信頼性検証はまだ進行途上にあるとみられる。
さらに、コンプライアンス遵守とパーミッションレス環境の両立は、今後の議論や制度設計の行方を左右する重要なテーマになっていく可能性がある。
それでも、今回の取り組みは「ブロックチェーンを安全に使いたい」という企業需要に応える具体的な一歩だろう。
今後、EFが定期的に更新する事例や技術情報が企業導入を加速させ、オンチェーン経済の標準化を後押しする可能性が高いと考えられる。
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