NVIDIAとSamsungが5万基GPUの「AIファクトリー」構築 グローバル製造に変革の波

2025年10月30日、米 NVIDIAは韓国 Samsung Electronicsと共同で、50,000基以上のNVIDIA GPUを搭載した新たな「AIファクトリー」を構築する計画を発表した。
半導体・モバイル・ロボティクス分野での製造革新が海外での先進的な取り組みとして浮上している。
NVIDIAとSamsung、 GPU5万基規模のAIファクトリーを連携構築
NVIDIAとSamsungは25年以上にわたる協業関係を基盤に、新たに「AIファクトリー」を共同で立ち上げることを明らかにした。
発表された施設は、50,000基以上のNVIDIA GPUを搭載し、半導体製造、モバイル機器、ロボティクス向けのエージェント型AI(※1)およびフィジカルAI(※2)アプリケーションを高速化することが狙いだ。
Samsungは、このプロジェクトにおいて、NVIDIAのCUDA-Xライブラリ、cuLithoライブラリ、Omniverseプラットフォームなどを活用し、OPC(光近接補正)リソグラフィ、EDA(電子設計自動化)ツール、デジタルツイン(※3)といった製造プロセスの高度化を図るとしている。
特に計算リソグラフィでは20倍の性能向上を実現したとされる。
このAIファクトリーでは、設計から運用に至るまでの工程においてAIを活用し、製造機器や生産ラインから得られるデータをリアルタイムで分析することで、予知保全やプロセス改善、運用効率の向上を図る構成となっている。
※1 エージェント型AI:意思決定や行動を自律的に行うAI。
※2 フィジカルAI:ロボットや自動化機器など物理的な対象を知能化するAI。
※3 デジタルツイン:物理的な設備の仮想モデルを用いて設計・運用を最適化する技術。
製造業の新標準となるか、AI統合工場の可能性
今回の協業によって、AIによる製造自動化が実用段階へと進みつつある。
最大のメリットは、AIによるプロセス最適化により、従来人手に依存していた生産調整や品質管理を自動化できる点だろう。
コスト削減だけでなく、製造スピードや歩留まり率の向上といった多面的な効率化が実現する可能性が高い。
特にデジタルツイン技術を活用した設計・シミュレーションの統合は、試作から量産までの期間を大幅に短縮し、Samsungにとっては半導体・ロボティクス事業の競争力強化に直結するとみられる。
一方で、AI導入には課題も伴う。巨額な設備投資に加え、生成AIの意思決定プロセスが不透明になりやすく、製造データの扱い方次第では情報流出リスクを抱える可能性もある。
特に国際的なサプライチェーンを持つ企業では、セキュリティ基準の統一が大きな課題となりそうだ。
今後は、こうしたAI統合型の「AIファクトリー」が新たな産業標準として広がるとみられる。
特にアジア圏では、労働力不足や老朽設備の更新需要を背景に、AIによる自律運用が急速に普及する可能性がある。
製造現場が知能化されたネットワークとして機能する“フィジカルAI”時代が、一気に現実味を帯びてきたといえるだろう。
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