「水素発電」アシスト自転車が敦賀市で実証実験 CO₂ゼロ・充電1回で100km走行も

2025年10月8日、福井県敦賀市は、水素燃料電池を搭載した電動アシスト自転車「水素自転車」を活用したシェアサイクルの実証実験を発表した。
トヨタ紡織と連携し、水素エネルギーの実用化と地域振興を目指す取り組みである。
敦賀市で「水素自転車」実証開始 トヨタ紡織が開発
福井県敦賀市で25日から4日間にわたり、水素発電を動力源とする電動アシスト自転車のシェアサイクル実証実験が行われる。
車両を開発したのはトヨタ紡織(愛知県刈谷市)で、同社が自治体と協働して実験を行うのは今回が初だという。
水素自転車は、水素を充填したタンクと酸素の化学反応によって発電し、CO₂を一切排出しない。
1回の水素充填で約100キロ走行でき、環境負荷を抑えつつ長距離移動が可能だ。
通常の電動アシスト自転車と性能は同等だが、バッテリー寿命は約10年と従来(3〜4年)の2倍以上に延びている。
今回の実験は、敦賀市が進める「嶺南Eコースト計画」の一環として実施されるもので、水素エネルギー産業の拠点化とカーボンニュートラル実現を目指す取り組みの一部だ。
昨年の敦賀まつりでは、試験的に2台を運用して約30キロ分のデータを取得しており、今回の実証では車両を4台に増やし、総走行距離400キロ分のデータ収集を目指す。
市古勇太・電動製品開発部担当は「利用者がどんな場所を走ったかや乗り心地など、貴重なデータを収集できる」と語っている。
また、市政策推進課の担当者は「脱炭素に貢献できる新しい移動手段で、可能性は無限大。普及、促進に向けて、企業とともに取り組んでいきたい」と述べている。
トヨタ紡織は、2028年から2030年頃に「水素自転車」を製品化することを目指している。
「実証から社会実装へ」水素自転車が描く次世代モビリティの未来
今後、水素自転車は「実証実験の段階」から「社会実装の段階」へと移行していく可能性が高い。
特に、水素を再生可能エネルギーから生成する仕組みが確立すれば、地域ごとに独立したクリーンモビリティ網を形成できるだろう。
こうした分散型エネルギーと交通手段の融合は、地方のエネルギー自立や観光地の環境価値向上にも寄与するとみられる。
一方で、水素インフラ整備には課題も残りそうだ。
小規模地域でのスタンド設置やボンベ流通網の整備には公的支援が不可欠であり、企業単独では採算が取りにくい可能性もある。
したがって、自治体やエネルギー事業者、メーカーが連携し、段階的に導入エリアを拡大するモデルが現実的だろう。
2030年頃までにボンベの軽量化やコスト削減が進めば、個人所有型の水素自転車が普及し、電動アシスト自転車市場に新たな潮流を生み出す可能性もある。敦賀市での取り組みは、その未来への布石といえる。
水素自転車は、環境技術と地域社会をつなぐ「次世代モビリティ」の象徴として、持続可能な交通の未来を先導していくだろう。
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