近江鉄道、AI搭載「ドクターガチャコン」運行開始 線路のゆがみを自動検知

2025年10月8日、近江鉄道と一般社団法人近江鉄道線管理機構(滋賀県彦根市)は、新形式車両「近江鉄道200形 ドクターガチャコン」のデビューを発表した。
線路異常をAIで検知する仕組みを初めて導入し、28日に八日市駅で出発式を行う。
西武2000系を改造 AIが線路の健康診断を担う
近江鉄道200形「ドクターガチャコン」は、西武鉄道2000系車両を譲り受けて近江鉄道仕様に改造した新型車両である。
2両編成2本を導入し、今後は本線・多賀線・八日市線の全線で営業運転を行う予定だ。
最大の特徴は、車両前面に設置されたカメラとAI解析システムを組み合わせた線路モニタリング機能にある。
走行中にレールのゆがみや部品の損傷を自動で検知し、異常の早期発見と保守作業の効率化を実現する。
この技術は近江鉄道として初の導入であり、安全性と運行安定性の両立を狙ったものだ。
「ドクターガチャコン」という名称は、線路検査用車両を象徴する黄色い車体と、同社の愛称「ガチャコン」を掛け合わせて付けられた。
出発式は10月28日に八日市駅で開催され、関係者によるテープカットや保育園児を招いた臨時列車運行も予定されている。
また、デビューを記念して10月12日からグッズ販売も始まる。
限定メタルキーホルダーやアクリルスタンド、クリアファイルなどがラインアップされている。
AIと人の協働が鍵に “スマート保守”が地域鉄道の未来を拓く
近江鉄道の「ドクターガチャコン」は、AIによる線路診断を軸に、地方鉄道の保守体制を根本から変える起点となり得る。
今後は、走行データを蓄積しながらAIの学習精度を高め、線路のゆがみや損傷を“予兆段階”で察知する「予知保全」モデルの確立が期待できる。
異常が発生する前に修繕を計画できれば、ダイヤの安定性が飛躍的に向上し、限られた人員でも高水準の安全を維持できる体制が整うだろう。
さらに、「AIが走る鉄道」という話題性は、観光・教育分野への展開も後押ししそうだ。
体験型イベントやデジタル学習コンテンツを通じて、地域住民が先進技術を身近に感じる機会を創出できる。
安全・効率・地域共創を兼ね備えたスマート鉄道のモデルとして、近江鉄道の挑戦は全国に波及していく可能性がある。
一方で、AI導入が進むほど、現場の監視能力とのバランスが問われると考えられる。
技術に依存しすぎれば、異常時の判断や緊急対応で人の経験が生きない恐れもある。
今後は、AIが提示するデータを人が的確に評価し、運行判断に反映する「協働型保守」が主流となるだろう。
近江鉄道 ニュースリリース:
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