千葉の自治体6割が生成AI導入 議事録や答弁書で業務効率化進む

2025年10月3日、千葉銀行グループのシンクタンク「ちばぎん総合研究所」は、千葉県内自治体の約6割が生成AI(人工知能)を業務に導入しているとの調査結果を発表した。
議事録作成や答弁書の作成など行政文書の効率化が進む一方、導入格差や人材不足が課題として浮かんでいる。
県内34自治体が生成AI導入 業務効率化と住民サービス両立に挑む
調査は2025年5〜6月、千葉県と県内54市町村を対象に実施された。
その結果、55自治体中34自治体が生成AIを導入していることが明らかになった。
導入率は人口10万人以上の自治体で93.8%に達し、5万人以下の自治体では37%にとどまるなど、行政規模による格差が顕著となった。
活用分野では議事録作成が最多で、住民からの問い合わせ対応、メール文書作成、議会答弁書作成が続いた。
利用するAIのうち、米オープンAI社の「ChatGPT」が67.6%を占め、一部では独自開発ツールを用いる自治体もあった。
県も「千葉県生成AI利用サービス」を導入し、職員の文書作成や内部問い合わせ業務にAIを活用している。
一方、8割近い自治体が活用拡大を検討しているものの、「費用対効果の不透明さ」や「導入を担う人材不足」が課題として挙げられた。
ちばぎん総研の高城華楠主任研究員は「自治体は業務効率化を求めているが、住民はサービス向上を求めている」と指摘する。
千葉県白子町では住民のAI理解を深める取り組みとして、研修企業Michikusa(みちくさ)と協定を結び、町民向けのChatGPT講座を11月から限定配信予定だ。
緑川輝男町長は「町内は高齢者が多く、スマートフォンを持っていても電話やメールで使う程度。全町民で便利に使いこなせるようになりたい」と語り、地域ぐるみでのデジタル教育を進めたい意向を示した。
生成AIが支える自治体の未来 効率化と共創の両立へ
今後は、生成AIを行政の補助ツールとして位置づける段階から、地域運営の新たな基盤として活用する方向へと進む可能性が高い。
議事録作成や答弁書作成などの定型業務で成果を上げた自治体は、次のステップとして、住民サービスや政策立案支援といった分野への応用を検討するだろう。
特に、AIが地域課題の可視化やデータ分析を担うことで、より精度の高い行政判断を支援できるようになるとみられる。
同時に、導入拡大に向けては、セキュリティや倫理面のガイドライン整備が不可欠となる。
生成AIが扱う情報の機密性を担保し、誤出力を防ぐチェック体制を確立できるかが、信頼性向上の鍵となるだろう。
また、小規模自治体では、共同利用型のAI基盤や広域連携によるコスト分散の動きが進むと予測できる。
AIを使いこなす人材を育成し、地域全体でデジタル活用力を底上げする取り組みが広がれば、地方行政の形そのものが変わる可能性もある。
生成AIを単なる効率化の手段にとどめず、行政と民間企業、他自治体などが協働する“共創型行政”への転換が、次のテーマとなるだろう。
ちばぎん総合研究所 調査研究情報:https://www.crinet.co.jp/research-post/20251003/
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