東京メトロとNEC、AI画像解析でレール腐食検知システムを共同開発 千代田線に本格導入

2025年9月26日、東京地下鉄(東京メトロ)、NEC、日本電気通信システムはAIと画像解析技術を活用し、レールの腐食を自動検知するシステムを共同開発したと発表した。
2025年8月から千代田線に本格導入し、保線業務の省力化と安全性向上を目指す。
ピクセル単位で腐食を抽出、千代田線で実運用開始
東京メトロとNEC、NEC通信システムの3社は、営業列車に搭載した線路設備モニタリング装置で撮影したレール画像をAIが解析し、腐食の位置やサイズを自動で抽出するシステムを開発した。
ディープラーニングを用いた「NEC Advanced Analytics – RAPID機械学習」の領域抽出機能により、腐食箇所をピクセル単位で特定できるのが特徴だ。
河川や濠に近接する区間では湿潤環境による腐食リスクが高く、早期の異常発見が重要となる。
そこで3社は、2019年度から2021年度にかけて千代田線北千住〜町屋間で検証を重ね、2023年度に本システムを開発した。さらに、2024年度に精度向上と実証試験を経て、2025年8月に本格導入した。
東京メトロはこれまでもCBM(状態基準保全※)の導入を推進しており、車両や軌道、トンネルの分野でデータに基づく効率的なメンテナンスを進めてきた。
今回のAIシステム導入はその一環であり、今後は他路線への展開も視野に入れるとしている。
※CBM(状態基準保全):設備の状態を常時監視し、劣化や異常の進行に応じて保守を行う手法。
保守省力化と安全性向上 鉄道業界全体への波及に期待
AIによる腐食検知の実用化は、鉄道保守の現場に大きな変革をもたらす可能性がある。
従来は人手に頼っていた点検作業の効率化が進めば、担当者の負担軽減や軽微な腐食の早期発見が現実味を帯びてくる。
これにより、進行度に応じた計画的な補修が可能となり、長期的なコスト削減につながると見込まれる。
一方で、AIが示す検知結果の信頼性をどの水準で保証するかは課題として残りそうだ。
精度向上には現場データを継続的に学習させる仕組みやアルゴリズム改善が不可欠であり、さらに解析結果を適切に解釈できる人材の教育体制も整備する必要があるだろう。
それでも、鉄道インフラの安全性向上に向けた意義は大きいと言える。
鉄道業界全体で保守の自動化・省人化が進めば、人口減少や人材不足といった構造的課題の解決にもつながるかもしれない。
東京メトロ プレスリリース:https://www.tokyometro.jp/news/images_h/metroNews250926_g39.pdf
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