英国FCA、暗号資産事業者に包括的規制案 2026年施行を正式協議へ

2025年9月17日、英国の金融行動監視機構(FCA)は暗号資産事業者に対する包括的規制の導入に向け、協議文書「CP25/25」を公表した。
2026年からの施行を見据え、従来の金融規制を暗号資産業務に適用する内容となっている。
FCA、暗号資産全般に既存金融規制を拡大
FCAが公表した協議文書「CP25/25」は、英財務省(HM Treasury)が4月に発表した法案草案に基づいて策定された。
文書では、これまで金融サービス企業に適用されてきた規制を、暗号資産関連事業全般に拡大する方針が示されている。
対象範囲は幅広く、シニアマネジメント体制や内部統制、金融犯罪防止、コンプライアンス強化に加え、顧客対応やクレーム処理のルールも含まれる。
暗号資産企業に対しては、シニアマネジメント体制や外部委託に関する要件について、既存規制をそのまま適用するのではなく、業態に応じた調整が検討されている。
一方で、サイバー攻撃を含む業界特有のリスクについてはより厳格な基準が適用される見込みだ。
さらに、FCAの監督対象は従来の金融プロモーションや金融犯罪対策に加え、ステーブルコインの発行、暗号資産の保管・取引プラットフォーム運営、ステーキング、仲介業務など、幅広い領域へと拡大する。
今回の包括的な規制提案により、これまで一部に限られていた監督対象が、暗号資産事業全般に広がることで、英国市場の規制枠組みは大きく拡張する見通しだ。
意見提出の期限も設けられており、ディスカッション章(第6〜7章)は2025年10月15日まで、協議章(第1〜5章)は同年11月12日までとされている。
提出された意見を踏まえ、FCAは最終的な制度設計を進める方針だ。
FCA規制案の功罪と英国市場の行方
FCAが示した暗号資産事業者への包括的規制案は、従来の金融規制を適用することで消費者保護と市場の透明性を高める狙いがあるとみられる。
シニアマネジメント体制や金融犯罪防止の枠組みが明確化されれば、詐欺やサイバー攻撃といった業界特有のリスクに制度的な対応が可能となり、投資家保護の観点からは前進と評価できるだろう。
さらに、既存金融機関と同等のルールが適用されることで信頼性が高まり、機関投資家や国際市場との連携強化にもつながりそうだ。
しかし、その一方で過度な規制が新規参入や技術革新を阻害する懸念も残る。
特に中小規模の事業者にとっては内部統制やコンプライアンス強化に伴うコスト負担が大きく、英国市場の競争力低下を招く可能性がある。
場合によっては、規制の緩やかな地域へ拠点を移す動きが加速し、国内市場の縮小につながる危険も否定できない。
2026年施行に向けた協議は、英国が国際的な規制枠組みを主導できるか、それとも厳格さが裏目に出て市場を縮小させるのかを占う試金石となるだろう。
FCAによる発表:
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