生成AIで生まれた猫の店員が詐欺を阻止 兵庫県警、ユーモラスな動画で防犯啓発

2025年9月18日、兵庫県警察が公式ユーチューブチャンネルで生成AIを活用した防犯啓発動画を公開した。
猫のコンビニ店員が特殊詐欺を防ぐ内容で、大学生ボランティアの声を吹き込みに起用。急増する被害を受け、県民への注意喚起を狙っている。
猫のコンビニ店員が詐欺被害を防ぐAI動画
兵庫県警が公開した動画は「還付金詐欺編」と「サポート詐欺編」の2本立てで、それぞれ3分25秒と2分39秒の短編となる。
担当した県民広報課員は「チャットGPT」を含む4種類の生成AIを活用し、約2週間で完成させた。
登場人物はすべて猫に擬人化され、詐欺の実行役や店員、警察官を演じている。
吹き替えは学生防犯ボランティア「ブルーフェニックス隊」の大学生4人が担当した。
兵庫県では今年1〜7月の特殊詐欺被害額が約39億円に達し、件数も1105件と前年同期から392件増えた。
深刻化を受け、県は10月から「特殊詐欺多発警報」を導入し、発令時にはコンビニや金融機関で警戒を強化する。
一方、声かけによる未然防止も行われており、2025年上半期には1196件の阻止事例があった。
そのうち219件はコンビニ店員による対応だったが、前年同期の半数程度に減少している。
生活安全企画課の山本修次席は「被害を防ぐには店員の協力が大きな力になる。誰しも動画と同じ状況を見かけたら、声をかけてほしい」と呼びかける。
AI猫動画が防犯啓発に果たす役割と限界
兵庫県警が生成AIを用いて公開した防犯動画は、特殊詐欺の増加に対する新しい啓発手法として注目できる。
猫を擬人化したキャラクターや大学生ボランティアによる声の吹き替えは、従来の堅苦しい広報とは異なり、親しみやすさとユーモアを備えている。
この工夫は若年層にも届きやすく、SNSでの拡散力を高める効果があると考えられる。短期間で制作できる点も、迅速な情報発信に資するだろう。
一方で、被害抑止の実効性はAIや映像ではなく、現場で対応する人間に依存している形だ。
実際にコンビニ店員による声かけ件数が減少している事実は、警戒力低下という課題を浮き彫りにしているだろう。
動画が行動の契機となるかどうかは、見る側の意識変化にかかっていると言える。
したがってAIは補助的な役割にとどまり、人の判断力と勇気が不可欠だと考えられる。
今後は、こうした動画形式の啓発が他地域にも広がる可能性がある。
キャラクター性を活かした表現は防犯教育の裾野を広げる可能性があり、店舗や金融機関の現場での協力を後押しする効果も期待できる。
ただし、最終的な成果は市民一人ひとりが実際の場面で声を上げるかどうかに左右されるだろう。
AIと人間の役割分担を明確にしながら、継続的な啓発が求められると考えられる。
還付金詐欺編:https://www.youtube.com/watch?v=tnOFCfDIrko
サポート詐欺編:https://www.youtube.com/watch?v=WlXuMbpc7VM
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