「水のいらない歯磨き」JAL機に搭載 宇宙発想のオーラルケア実証実験

2025年9月16日、日本航空(JAL)と日本たばこ産業(JT)は、宇宙飛行士向けに開発されたマウスウォッシュタブレット「Chupica(チュピカ)」を実際の航空機内で試験導入したと発表した。
長距離フライトや海外滞在における利便性検証を目的とするものだ。
宇宙発想の「Chupica」実証がJAL機で始動
JALとJTは、宇宙生活課題から着想したビジネス共創プラットフォーム「Think Space Life(TSL)」を通じて、初の共同プロジェクトを展開した。
今回の対象は約100名の客室乗務員で、6時間を超えるフライト乗務の休憩中や渡航先で「Chupica」を使用し、使用感や利便性をアンケート形式で収集した。
「Chupica」は2024年9月に一般市場でテストマーケティングされた、タブレット型ハミガキ兼マウスウォッシュで、水が限られる宇宙環境でも口腔内を清潔に保てるよう設計されている。
前身の「mouthpace®」は既に国際宇宙ステーション(ISS)で4回の搭載実績を持ち、2025年8月には油井亀美也宇宙飛行士の長期滞在ミッションでも採用されている。
JTは製品を提供し効果検証を担い、JALは「CAビジネスリサーチ」を活用して実際の機内環境で使用データを収集した。
航空機という閉鎖空間での評価を通じて、製品改良・商品開発に生かす試みとなった。
宇宙発オーラルケア、日常市場への浸透が鍵か
「Chupica」の取り組みは今後、「宇宙技術の地上応用」という流れを象徴する存在になるだろう。
水を使わずに歯磨きができる点は、航空機や災害時といった特殊環境にとどまらず、日常生活の多様なシーンにも広がる可能性を秘めている。
特に移動が多いビジネスパーソンやアウトドア愛好者、高齢者や介護現場での需要が見込まれる。
こうした幅広い市場を取り込むには、JAL乗務員によるフィードバックを基盤とした改良が欠かせないため、使用感や味、コスト面での調整が普及の成否を大きく左右すると考えられる。
今後、航空会社や宇宙関連企業との連携が進めば、「宇宙発の生活インフラ」というブランド価値が確立し、製品の社会的認知度も高まる可能性がある。
一方で、量産体制やコスト削減をどこまで実現できるかは課題であり、価格競争力を備えなければ、一般消費者市場での浸透は難しいとみられる。
成功すれば、防災備蓄やアウトドア市場のみならず、日常のケア用品として、新たなカテゴリーを築けるかもしれない。
日本航空株式会社 プレスリリース:https://press.jal.co.jp/ja/release/202509/009038.html
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