メタマスクが独自ステーブルコイン「mUSD」を正式発行 Web3活用の拡大狙う

2025年9月16日、米コンセンシス傘下のWeb3ウォレット「メタマスク」が独自ステーブルコイン「メタマスクUSD(mUSD)」を正式にローンチした。
米ドル建て1:1裏付けを特徴とし、自己保管型ウォレットにネイティブ統合される初の事例となる。
メタマスク、米ドル裏付けのmUSDを発行
今回発表されたmUSDは、セルフカストディ(※)型ウォレットとして初めてネイティブに統合されるステーブルコインであり、ユーザーはメタマスク内で送金・スワップ・ブリッジといった機能を直接利用できる。
提供はイーサリアム(Ethereum)と、コンセンシスが開発したレイヤー2スケーリングソリューション「リネア(Linea)」から開始される。
mUSDの発行主体は決済プラットフォーム「Bridge(ブリッジ)」であり、準備金の保全やコンプライアンス対応を担う。
一方、その基盤となるのが分散型ステーブルコインインフラ「M0(エムゼロ)」で、クロスチェーン互換性と透明性を備え、米ドル建て1:1の裏付けを保証する仕組みを提供する。
また、メタマスクはmUSDをDeFiの貸付プロトコルや分散型取引所(DEX)に統合していく計画を示しており、年内にはマスターカード連携の「メタマスクカード」での利用も予定している。
さらに、米決済インフラ企業トランサック(Transak)との提携により、アプリ内「入金(Deposit)」機能からmUSDやUSDC、USDTをほぼ1:1のレートで購入できる仕組みも同時に開始された。
※セルフカストディ:暗号資産を取引所に預けず、ユーザー自身が秘密鍵を管理して保有・運用する方式。セキュリティや自己責任のリスクが伴うが、資産の完全な所有権を確保できる。
規制対応と利用拡大がmUSDの成否を左右
mUSDの普及は、分散型ウォレットの利便性を大きく押し上げる可能性がある。
自己保管型の特徴を活かし、取引所を介さずに安定した取引が可能となれば、ユーザーは透明性と利便性を同時に享受できるだろう。
特にDeFiやクロスチェーン取引との連動性は、金融アクセスを広げる要因となり得る。
さらに、マスターカードとの提携を通じて日常決済への利用が進めば、既存のステーブルコインとの差別化につながる可能性も高い。
一方で、規制の不確実性は大きな課題となるだろう。
米国を中心にステーブルコイン発行体への規制強化が進む中、準備金の透明性やAML(アンチ・マネー・ローンダリング)・KYC(本人確認手続き)への適切な対応が信頼性を左右するとみられる。
mUSDがこれらを継続的に満たすことは、長期的な定着に不可欠といえる。
加えて、USDTやUSDCといった既存銘柄の圧倒的なシェアを前に、新規参入者が地位を確立するのは容易ではないだろう。
結局のところ、mUSDの成否は規制対応の徹底とユースケース拡大にかかっているとみられる。
DeFi市場やWeb3サービスでの活用度を高め、さらに決済を含む実生活に浸透できれば、メタマスクは単なるウォレットを超え、分散型金融の中核的な存在へと進化する可能性がある。
メタマスク ブログ:https://metamask.io/ja/news/metamask-announces-stablecoin-metamask-usd
Transak ブログ:https://transak.com/blog/transak-and-metamask-join-forces-to-offer-11-stablecoin-onramping-and-named-ibans
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