米フィグマ株が急落 AI普及で成長鈍化懸念、売上高見通しに失望

2025年9月4日、デザインソフトを手がける米フィグマの株価が急落し、7月の上場以来の安値を更新した。
通期の売上高見通しが市場予想に沿った一方で、投資家の高い期待に届かず、AI普及による需要減少への警戒感が背景にあるとブルームバーグは報じている。
フィグマ株20%安 通期見通しで投資家失望
フィグマは3日に公表した資料で、2025年通期の売上高を約10億2000万ドル(約1500億円)と見込むと発表した。
この数字はアナリスト予想の平均とほぼ一致する。
また、調整後営業利益は8800万〜9800万ドルの予測で、市場予想の8800万ドルと同水準にとどまった。
しかし、株価は翌4日に20%下落し、1株54.56ドルで取引を終えた。
7月31日の新規株式公開(IPO)では株価が初値から一時3.5倍に急騰したが、その後下落基調が続き、上場来高値からは53%も減少している。
同社はこれまで、ウェブやモバイルアプリのデザインにとどまらず、アイデア共有やソフトウエア開発向けのツールへと事業を拡大してきた。
第2四半期(4〜6月期)には、顧客の8割以上が複数の製品を利用していると説明し、エコシステム強化の成果を強調している。
実際、この四半期の売上高は前年同期比41%増の2億4960万ドルに達し、調整後営業利益も1150万ドルと、前年同期の488万ドルから倍増した。
一方で、RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、リシ・ジャルリア氏は、AIを活用した開発効率化が進めばフィグマ製品の必要性が低下する懸念を示している。
AI特化型アプリが台頭し、競争環境が一段と厳しくなる可能性があるためだ。
ただし、フィグマ自身もAI分野への投資を積極化しており、同社にとってAIは「強力な追い風」になるとの見方も根強いようだ。
短期は乱高下、中期はAI統合が成否を左右か
フィグマの強みは、AIを積極的に取り込むことで、新しい市場を切り拓きやすいことにあると考えられる。
設計効率や共同作業の質を高められる余地があり、複数製品を利用する顧客の増加やIPO後の売上成長も、需要の底堅さを示していると推測できる。
一方で、AIの普及は既存事業を揺るがすリスクにもなり得る。
自動化が進めば従来型ツールの必要性は低下し、AI特化型の競合が存在感を増せば、差別化が難しくなる可能性がある。
短期的には株価の乱高下が続き、投資家心理の動揺が残る展開が予想できる。
市場は「期待を超える成果」を求めているため、それを欠けば回復は限定的になるだろう。
中期的には、AI統合の成否が最大の焦点となりそうだ。
デザインプロセスを再定義する体験を打ち出せれば基盤拡大につながるが、競合に主導権を奪われれば、シェア縮小を避けにくいだろう。
長期的には、AIを「成長ドライバー」として位置づけられるかが鍵になると考えられる。
開発とデザインを結びつける統合プラットフォームを築ければ成長軌道を取り戻す可能性があり、今回の急落はAI時代における行方を占う試金石となるかもしれない。
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