自動車部品イクヨ、米企業に3億円出資 ステーブルコインB2B越境決済実証へ

2025年8月27日、自動車部品メーカーのイクヨは、米ギャラクティック・ホールディングス社への3億円規模の出資を決定した。
同社が展開するステーブルコイン決済事業を活用し、業界初となる越境B2B取引の実証を目指す。
イクヨ、米ギャラクティック社に3億円出資決定
イクヨは27日、取締役会で米ギャラクティック・ホールディングス社への第三者割当増資3億円を引き受けると発表した。
ギャラクティックはテキサス州に拠点を置き、ステーブルコイン(※)を活用したB2B越境決済インフラを提供している。
すでに中南米を中心に複数国でライセンスを取得し、国際送金網を拡大してきた。
今回の出資は6月に発表した業務提携の延長にあたり、資本参加により協業体制をさらに強化する狙いがある。
イクヨは中国子会社クンシャン・ベリタス・オートモーティブ・システムズを通じ、メキシコのベリタス社と自動車部品取引を行っている。
現在はペソ建てで支払い後にドルへ変換する方式だが、ステーブルコイン導入で送金手数料の削減と決済時間の短縮を見込む。
同社は7月に発表した中期成長戦略で、ステーブルコイン事業を新規事業の柱に位置付けていた。
従来の自動車部品事業で培った国際サプライチェーンの知見を応用し、グローバル取引の効率化と透明性向上を進める方針である。
今回の取り組みはあくまでPOC(概念実証)に位置付けられており、開始時期や収益化スキームは未定とされる。
それでも自動車部品業界でステーブルコイン決済を導入する先行事例となり、日米間や中南米、東南アジアを結ぶ新たな金融インフラ構築につながる可能性がある。
市場はこの動きを好感し、イクヨの株価は28日に一時1,293円の高値をつけた。
年初来で4倍超の値上がりを示した。
※ステーブルコイン:米ドルなどの法定通貨と価値を連動させ、価格変動を抑えた暗号資産。
ステーブルコイン普及の試金石 規制整備と実証成果がカギ
イクヨによる米ギャラクティック社への出資は、今後の国際取引のあり方を変えるきっかけになる可能性がある。
業界初の事例として注目されることで、ステーブルコインを用いた決済が自動車部品業界における現実的な選択肢として浮上し、議論が加速していく展開が想定できる。
特にメキシコや中南米市場では送金効率化への需要が高く、取引スピードやコスト削減の成果が数値として示されれば、他社の追随を促すだろう。
一方で、普及には規制環境の整備が大きく影響するだろう。
各国の制度対応が遅れれば実証段階を超えるには時間を要し、収益化までの道のりは不透明なまま残る可能性がある。
したがって、今後はパートナー企業や金融機関との連携強化を通じ、安定的な運用基盤を築けるかどうかが焦点となる。
展望としては、POCで得られる成果を具体的に数値で示し、それをどのようにビジネスモデルへ発展させるかが重要になるだろう。
収益化の道筋が明確になれば、ステーブルコインは自動車部品業界にとどまらず、製造業全体の国際取引に広がる可能性も高い。
株式会社イクヨ プレスリリース:https://www.nikkei.com/markets/ir/irftp/data/tdnr/tdnetg3/20250827/fhw6za/140120250827548150.pdf
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