金融庁、暗号資産取引に分離課税を要望 2026年度税制改正で検討へ

2025年8月21日、日経新聞は金融庁が2026年度の税制改正要望で暗号資産(仮想通貨)取引に対する課税制度の見直しを政府へ求める方針だと報じた。
現在の総合課税から、株式と同様の分離課税への移行を検討するという。
暗号資産取引を株式同様の分離課税へ見直し要望
金融庁は2026年度の税制改正要望において、暗号資産取引の課税方式を見直す方向性を示した。
日経新聞によれば、暗号資産の売買益は総合課税の対象となり、最高で55%の税率がかかる。
これに対し、株式や投資信託には約20%の分離課税が適用されており、この大きな差が投資家に重い負担を与え、国内市場の魅力を低下させているとみられる。
また、暗号資産ETF(上場投資信託)の扱いについても制度的な整備が求められている。金融庁は組成を容易にするための税制上の措置を同時に要望するとみられる。
これが実現すれば、株式や債券に近い形で暗号資産を金融商品として組み入れることが可能になり、資産運用の多様化が進む可能性がある。
こうした動きは、暗号資産を金融商品として位置づける法改正の準備とも関連している。
金融庁は今年3月、暗号資産を「決済手段」から「金融商品」として金融商品取引法(※)に組み込む改正案を国会に提出する方針を示していたことが報じられていた。
さらに報道では、政府が掲げる「資産運用立国」の推進に向け、少額投資非課税制度(NISA)の拡充や子育て世代を意識した対象年齢の見直しも金融庁が要望に盛り込むと伝えられている。
暗号資産の分離課税は、投資環境をより包括的に整備していく流れの中に組み込まれるものと考えられる。
※金融商品取引法:株式や債券などの有価証券の取引を規律する日本の基本法。投資家保護や市場の公正性を確保するための枠組みを定める。
投資環境改善で市場拡大へ 投機リスクと安定性確保が焦点
暗号資産取引に分離課税が導入されれば、個人投資家の投資環境は大きく改善するとみられる。
暗号資産が株式と同程度の税率に下がれば、手元資金に余裕が生まれると推測できる。それらが再投資されることで、市場の流動性はより高まるだろう。
さらに、ETF制度が普及すれば、機関投資家や投資信託を通じた資金流入が加速し、市場規模は拡大へと向かう可能性がある。
一方で、税率引き下げが短期的な投機熱を強めるリスクも残る。
暗号資産市場は依然として価格変動が激しいため、税制優遇が過度な資金流入を呼び込めば、価格の急騰と急落を繰り返す不安定な局面を招く懸念もある。
投資促進と市場安定の両立は、政策当局にとって避けられない課題となるだろう。
暗号資産の制度整備が、政府の「資産運用立国」戦略と連動して進められれば、暗号資産はNISA拡充などと並ぶ投資促進策の一環として位置づけられ、若年層を含む幅広い層に浸透していくと予想できる。
ETF制度の定着と相まって、暗号資産は株式や債券と肩を並べる金融商品の一角として存在感を高め、家計資産形成の選択肢の一つとして、社会的に認知される未来が開けるだろう。