金融庁がJPYCを資金移動業に登録 円建てステーブルコイン国内発行が現実に

2025年8月18日、金融庁はフィンテック企業JPYC(東京都千代田区)を資金移動業に登録したと発表した。
国内で初めて法定通貨と連動する円建てステーブルコインの発行が可能となり、日本のデジタル資産市場に新たな転機をもたらす見通しだ。
JPYC、円建てステーブルコイン発行に向け準備加速
金融庁は2023年の資金決済法改正により、ステーブルコインの発行主体を銀行・信託会社・資金移動業者に限定しており、今回の登録によりJPYCは国内で初めて円建てステーブルコインの発行資格を得た。
JPYCは「1JPYC=1円」で交換できるステーブルコイン「JPYC」を発行し、イーサリアムなど3種類のブロックチェーン上で流通させる考えである。
当面は海外送金や法人決済などでの活用を視野に入れており、分散型金融(DeFi)での資産運用手段としても利用可能になるとみられる。
国内で現在流通しているステーブルコインは米サークル社が発行するドル建てUSDCのみであり、円建てステーブルコインの発行は市場において大きな転機となる。
JPYCは日本円や預金・国債を裏付け資産とし、発行額と同額の現預金等を保全することで透明性を確保する方針を明らかにしている。
同社は「国内外における日本円建てステーブルコイン事業の中核的存在を担い、透明性や低コスト送金といった特性を生かし、効率的なデジタル金融イノベーションを推進する」とコメントしており、9月にも販売を開始する見込みだ。
※ステーブルコイン:ブロックチェーン上で発行される暗号資産の一種であり、特定の法定通貨や資産と価値を連動させることで価格変動を抑えたデジタル決済手段。
https://plus-web3.com/media/stablecoin/
低コスト送金に期待 利便性向上と規制強化の両立が焦点に
円建てステーブルコインの登場は、個人や企業の送金・決済手段に大きな変化をもたらす可能性がある。
従来、国際送金には数日程度の時間と高額な手数料を要していたが、ブロックチェーン技術によりリアルタイムかつ低コストの送金が実現するため、特に中小企業や個人投資家にとって利便性の向上が期待できる。
一方、資金洗浄や不正取引に利用されるリスクは依然として残るだろう。
匿名性の高い取引が可能な暗号資産の性質上、KYCの徹底や運営事業者によるモニタリングが不十分であれば、犯罪資金の温床となりかねない。
また、安定的な裏付け資産の保全体制が維持されない場合、発行主体への信用不安が市場の混乱を招く可能性がある。
今後は、円建てステーブルコインが国内送金・国際送金の双方において実際の活用フェーズへ移行できるかが焦点となるだろう。
9月の販売開始後、利用事例が徐々に広がれば、金融庁による追加的なガイドライン策定や他事業者の参入が相次ぐ可能性は高い。
さらに、CBDCとの連携が検討対象に入ることで、公的セクターと民間のデジタル通貨が補完的な関係を構築していく展開も考えられる。
将来的には、DeFiを含むデジタル金融エコシステムの中で「円」を価値移転手段として活用する動きが加速し、国内資本市場の流動性向上につながる展開も期待できる。











