米、エヌビディアの中国向けAI半導体「H20」輸出を許可 4か月ぶりの再開

2025年8月8日、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米政府が半導体大手エヌビディアに対し、中国向け人工知能(AI)半導体「H20」の輸出許可証発行を開始したと報じた。
4月の規制強化で停止していた出荷が再開に向け動き出した。
性能抑えた中国専用「H20」、4か月ぶりに出荷再開へ
エヌビディアのジェンスン・フアンCEOは6日、ホワイトハウスでトランプ大統領と会談を行った。その直後、米商務省が「H20」の輸出許可証発行を開始したという。
H20は米国の輸出規制に適合させるため、性能を意図的に抑えた中国専用モデルである。
同製品は、2025年4月の追加規制により出荷が停止していた。
エヌビディアは7月時点で「近く許可が下りる見通し」としており、今回の動きはその発言を裏付けるものとなった。
米政府の対中半導体規制は、AI・スーパーコンピュータ分野での中国の技術発展を抑制する狙いがある。
H20の供給再開は、中国の生成AI開発やデータセンター事業に一定の影響を与えるとみられる。
供給再開が生む商機と緊張 AI半導体競争の行方
今回の輸出許可は、エヌビディアにとって中国市場での売上回復につながる可能性が高い。
中国は同社GPUの最大級の需要先であり、H20の再投入はデータセンターやAIスタートアップからの発注増を呼び込むことが予想できる。
米半導体業界にとっても、収益源確保と国際競争力維持の観点でプラス材料となるだろう。
一方で、規制の枠内であっても、高度AI半導体の対中供給は、米中間の戦略的緊張を刺激するリスクがあるとみられる。
特に、H20が生成AIや軍民両用技術に転用される可能性への警戒は根強いと考えられる。
今後は、米政府が許可範囲をどこまで維持するかが焦点となるだろう。
過去の事例から、地政学的情勢や中国側の技術動向次第で再び規制が強化される可能性もある。
エヌビディアは供給再開を契機に、中国依存度の高さと規制リスクのバランスを、再度見極める必要がありそうだ。
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