トランプ大統領、12兆ドル退職金制度で仮想通貨投資解禁を指示

2025年8月8日、米国のドナルド・トランプ大統領は、約12兆5,000億ドル規模の401k退職金制度で仮想通貨などの代替資産投資を解禁する大統領令に署名した。
労働省に対し、関連ガイダンスの見直しを6か月以内に実施するよう指示している。
401kで仮想通貨・不動産などの代替資産投資を解禁
今回の大統領令は、労働省が所管する従業員退職所得保障法(ERISA)対象の401k制度において、仮想通貨、プライベートエクイティ、不動産などの代替資産投資を可能にするものだ。
トランプ政権は、参加者に多様な資産配分ファンドを提供する際の受託者責任について、政府見解を明確化するよう求めている。
さらに、財務省や証券取引委員会(SEC)を含む連邦規制機関との連携を通じ、必要な規則改正を進める方針だ。
労働省は5月28日に、バイデン前政権下で制定された401k制度への仮想通貨投資制限指針を撤廃済みである。
この旧指針では、受託者に対し仮想通貨投資の取り扱いに「極度の注意」を求めていたが、新政権は中立的アプローチへ転換している。
資産運用企業ビットワイズの試算によれば、約8兆ドル規模の401k市場で仮想通貨が1%のシェアを獲得すれば800億ドル、10%で8,000億ドルの資金流入が見込まれるという。
※401k制度:米国の企業型確定拠出年金制度の一つで、加入者が積み立てた資金を株式や債券、投資信託などで運用する。ERISA(従業員退職所得保障法)の規定に基づき、受託者が運用管理を担う。
401kに仮想通貨解禁 退職金運用の常識転換なるか
今回の大統領令は、401k制度における投資先の多様化を一気に進める可能性がある。
これまで株式や債券中心だった資産配分に、仮想通貨やプライベートエクイティ、不動産などの代替資産が組み込まれることで、運用戦略はより柔軟かつ高度化するだろう。
今後、仮想通貨の採用が進めば、退職金制度における資産形成の概念そのものが変わる可能性もある。
一方で、仮想通貨は依然として高い価格変動性を持つため、長期運用においては大幅な資産目減りのリスクが残る。こうした性質が加入者の投資行動や制度設計にどのような影響を及ぼすのかについては注視が必要そうだ。
市場の成熟度次第では、今回の決定が「退職金資産における仮想通貨定着」の出発点となるかもしれない。
価格の安定化、規制との整合性、実体経済との接続度が高まれば、制度内での比重は拡大するだろう。
逆に、それらが不十分なままなら、利用は限定的にとどまり、一過性の市場熱狂として収束する可能性もある。
今後数年の市場動向と制度運用が、この政策の評価を大きく左右するだろう。