バンダイナムコHD、中国子会社で約5億円の不正流出 元従業員が取引先と共謀

2025年7月25日、バンダイナムコホールディングスは、中国子会社「BANDAI LOGIPAL」において元従業員が約5億円を不正に詐取していたと発表した。
事件は内部監査により発覚し、当該人物はすでに逮捕されている。親会社や関係取締役にも処分が下された。
中国子会社で元従業員が約5億円を詐取、取引先と共謀
不正が明らかになったのは、香港を拠点とする中国子会社「BANDAI LOGIPAL」。同社は国際物流を担うバンダイロジパルの子会社である。
2023年9月に実施された内部監査で異常が発見され、社内調査の結果、元従業員が2021年から2023年にかけて取引先企業と共謀し、約5億円を不正に詐取していたことが判明した。
バンダイナムコHDによると、該当従業員は2024年1月16日に現地当局により逮捕され、現在も捜査が継続中。
BANDAI LOGIPALは民事訴訟も提起しているという。
この事態を受けて、同社は関係者の処分を実施。
BANDAI LOGIPALの取締役3名については社内規定に基づく処分を行ったほか、バンダイロジパルの代表取締役と常勤取締役4名には報酬の30%を3カ月間減額、さらに別の2名の常勤取締役に対しても15%の3ヵ月減額処分が下された。
バンダイナムコHDは今回の不正を重く受け止め、「ステイクホルダーの皆さまに多大なご心配とご迷惑をおかけすることを深くおわび申し上げます」と謝罪。
再発防止策として、BANDAI LOGIPALの業務フローを見直し、チェック体制を強化するとともに、親会社であるバンダイロジパルに新たな海外子会社管理部門を設置する方針を明らかにした。
不正発覚を契機に統制見直しへ 海外子会社ガバナンス強化が焦点
バンダイナムコHDは今回の不正発覚を受け、迅速に社内監査を実施し、関係者の処分や再発防止策を打ち出した。
さらに、海外子会社のガバナンス強化に向け、新たな管理部門の設置を進める方針を示しており、将来的にはグローバル統制の再構築を行うことが推測できる。
ただし、本件が示したように、同社のコンプライアンス体制には依然として課題が残る。
2年以上にわたり不正が見過ごされていた事実や、取締役への処分が減給にとどまった点には、今後も外部からの批判が続く可能性がある。
これにより、企業イメージの毀損や株主の信頼低下が短期的なリスクとして浮上することも懸念される。
こうした状況を受け、今後はグループ全体での統制機能の見直しが加速すると予想される。
特に、海外子会社における監査体制や人事・取引先管理の抜本的な改革が求められるだろう。
新設される管理部門についても、本社の意向を反映しつつ、現地の事情に柔軟に対応できる体制が構築されるかどうかが、その実効性を左右する鍵となるとみられる。
バンダイナムコHDがこの事件を教訓とし、ガバナンスの質的向上に取り組めるか否かは、今後の企業価値を大きく左右する分岐点となるはずだ。