再春館製薬所、AI活用で「心と体に深く寄り添う対話」を実現 DM購買率20%増

2025年7月17日、再春館製薬所は、GROWTH VERSEAIと共同で、AIを活用した顧客一人ひとりの心と体の状態に深く寄り添う新たな「対話」の仕組みを設計したと発表した。
この仕組みにより、DMやメールの購買率が約20%向上したという。
AIが「心地よさ」を生む対話設計で購買行動を活性化
基礎化粧品「ドモホルンリンクル」を展開する再春館製薬所は、AIを活用した「個別最適アプローチ」の取り組みを明らかにした。
従来の「効率化」ではなく、「心地よさ」に重点を置いたコミュニケーションの最適化を目指す同社は、AIによって顧客一人ひとりの行動や状態を分析し、最適なタイミングでの情報提供を行う仕組みを構築した。
再春館製薬所にとって、顧客との関係性は「対話」が要となってきた。
従来は電話を中心に寄り添う姿勢を重視していたが、現在では顧客の9割がデジタル経由での接点となっており、「悩みの本質や感情の背景」に深くアクセスする機会が減少しつつある。
こうした状況に対応するため、再春館製薬所はAIを活用して顧客の購買履歴や行動データを分析し、最適なタイミングで情報を届ける仕組みを構築した。
主力製品であるドモホルンリンクルの「保湿液」は通常60日で使い切る量が想定されているが、AIが過去の購買履歴から個人ごとの使用タイミングを推定。そのタイミングに合わせて関連キャンペーンを案内する「AIレコメンドメール」を実施した。
結果、旧来の施策と比べてDMの購買率が約20%向上したという。共同設計者のGROWTH VERSEがその成果を発表している。
この仕組みは、広告やDM、電話対応を含む多チャネルにまたがって展開されており、再春館製薬所が蓄積してきた顧客のカウンセリング履歴や肌状態などの情報とAIが連携することで、対話の質を保ちながら自動化を実現している。
AIが支える“人らしい”対話、課題は信頼感の維持
再春館製薬所のAI活用は、今後もパーソナライズド・マーケティングの先進事例として注目を集めていくと考えられる。
肌データやカウンセリング履歴をAIと連携させ、「心地よさ」に重きを置いた対話設計を実現。電話・DM・メールなど多様なチャネルを活用し、デジタル時代に即したパーソナライズド・マーケティングを推進している。
しかし、AIによる最適化が進んでも、受け手が機械的と感じれば信頼低下を招く恐れがある。
特に「人との対話」を重視してきた再春館製薬所にとっては、AI活用がブランドイメージを損なうリスクも伴うだろう。
今後、再春館製薬所の「対話型AIマーケティング」はさらに進化していく可能性が高い。
現在は購買履歴にもとづくレコメンドが中心だが、今後は表情解析や音声感情分析といった非言語情報を加味した「感情ベース」のパーソナライゼーションへと発展することが予想される。
AIがいかに進化しても「人の温度」を感じさせる演出と融合できなければ、消費者の共感は得られない。
再春館製薬所が目指す「寄り添う対話」の深化には、テクノロジーとヒューマンタッチの最適なバランス設計が不可欠となるだろう。