英中銀総裁が銀行ステーブルコインに警鐘 トランプ政権とは対照的な構え

米国時間2025年7月14日、英タイムズ紙は、イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁が、銀行発行のステーブルコインに対する懸念を表明したと報じた。
米国でトランプ大統領が暗号資産規制を緩和する姿勢を見せる中、英中銀は慎重な立場を貫く構えを示している。
ベイリー総裁、ステーブルコインは金融安定を損なうと主張
イングランド銀行のベイリー総裁は、銀行による独自のステーブルコイン開発が金融安定に与えるリスクを強調し、代替案として「トークン化された預金」の導入を提案した。
同氏はタイムズ紙のインタビューで、ステーブルコイン(※)は伝統的な銀行預金と同様の保護がなく、名目価値を維持する仕組みに欠けると指摘。
ステーブルコインの台頭によって資金が銀行システムから流出し、信用創造や金融政策の調整能力が弱体化するおそれがあると述べた。
ベイリー総裁は「貨幣は交換の手段だ。したがって、それら(ステーブルコイン)は本当に貨幣の特性を持つ必要があり、名目価値を維持する必要がある。我々はその観点から非常に綿密にそれを検討する必要が出てくるだろう」と語った。
この発言は、米議会で審議中の「ジーニアス法(Genius Act)」と対照的である。同法案は、仮想通貨関連の法案だ。
JPモルガンやシティなどの大手金融機関は、規制が緩和されることでデジタル金融の利用が一気に広がると見込み、その対応に向けた準備を進めていると報じられている。
※ステーブルコイン:法定通貨や資産の価格に連動するよう設計された暗号資産。

トランプ政権の「仮想通貨フレンドリー政策」に英中銀が一線
今後もイングランド銀行を含む中央銀行は、金融の安定を重視した慎重な規制姿勢を維持するとみられる。
ステーブルコインの普及は預金流出や信用創造のリスクを伴うため、預金保護や流動性支援のない民間通貨には引き続き警戒が必要だろう。
一方で、ブロックチェーンを活用しつつも既存の金融秩序を保てる「トークン化預金」のような仕組みが、今後の政策の柱となる可能性がある。
信頼性と技術革新を両立させるアプローチとして、中央銀行主導のデジタルインフラには注目できる。
とはいえ、暗号資産に対する慎重すぎる姿勢は、英国の技術革新や国際競争力の低下を招く可能性がある。
米国が仮想通貨推進に動く中、過度な規制は民間の意欲を削ぎ、フィンテック企業や資本の海外流出につながるリスクもあるだろう。
今後、英米のステーブルコインやデジタル通貨をめぐる規制の差はさらに広がる見通しだ。
米国はトランプ政権のもと、民間主導で暗号資産の普及を後押ししており、銀行によるステーブルコイン発行の合法化も進むだろう。
この流れにより、米国は国際的なデジタル決済で主導権を握る可能性は高いと思われる。
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