エヌビディア、中国向け「H20」出荷再開へ 米政府が輸出許可を確約

2025年7月15日、米半導体大手エヌビディアは、AI向けアクセラレータ「H20」の対中輸出について、米政府から許可を得たと明らかにした。
規制下でも再出荷が可能となる見通しで、同社は早期の供給再開を目指す。
AI半導体「H20」、中国市場への再供給が現実に
エヌビディアは、中国向けに設計されたAIアクセラレータ(※)「H20」の輸出について、米政府から許可の確約を得たという。
CEOのジェンスン・フアン氏が顧客に語った内容によれば、同社はすでに申請を進めており、今後の出荷再開に強い期待を寄せている。
H20は、米国による先端半導体の対中輸出規制を受け、エヌビディアが中国市場専用に設計した製品である。
2023年以降、A100やH100といったハイエンドAIチップの対中販売が事実上停止されたことを受け、中国向けラインナップとして投入された経緯がある。
フアン氏は、先週トランプ前大統領との会談を行ったほか、今週は中国・北京で開催される「サプライチェーンエキスポ」に出席する予定で、米中間の供給網維持に向けた動きが活発化している。
※AIアクセラレータ:人工知能の処理を高速化するハードウェア。
対中輸出の再開で収益回復も、地政学リスクは残る
H20の出荷再開は、エヌビディアにとって業績面での追い風となる可能性が高い。
中国はAIへの投資を加速しており、同社の半導体に対する需要も依然として強い。
出荷再開によって、中国市場からの収益が回復するだけでなく、グローバルなシェアの維持にも寄与するとみられる。
一方で、依然として地政学的リスクはくすぶっている。
米中間の技術覇権争いが再燃すれば、再び規制が強化される可能性も否定できない。
今回の輸出許可も、恒久的な免除ではなく、あくまで製品ごとの個別判断に基づいている。
短期的には、H20の供給再開によりエヌビディアの中国市場での存在感が回復し、取引再開も加速するとみられる。
一方で中長期的には、米中対立による政策リスクを踏まえた、中国依存の回避と地域分散・現地連携の強化が重要となるだろう。