国連大学マルワラ学長、熊本大で講演 AIの正しい活用を呼びかけ

2025年7月8日、東京に本部を置く国連大学のチリツィ・マルワラ学長が熊本大学で講演を行い、持続可能な社会の実現に向けたAIの正しい使い方について語った。
学生約200人が参加し、SDGsの取り組みや地域課題との接点にも注目が集まった。
「AIは正確でも真実ではない」—倫理的活用の重要性訴える
今回の講演は、熊本大学で開かれた国連大学の学びに関する企画の一環として実施された。
マルワラ学長は南アフリカ出身のAI研究者で、2023年に国連大学の学長に就任している。
講演では、AI技術の発展が社会全体に恩恵をもたらす一方で、誤用や依存がもたらすリスクについても強調された。
「AIは正確性には優れているがそれが必ずしも真実というわけではない」と語り、判断の主体は人間にあるべきだと訴えた。
さらに「AIに頼るのではなく正しく活用することで持続可能な社会を実現するべきだ」とも語った。
また、国連大学のSDGsに関する研究活動についても説明した。
講演では熊本の地域資源にも触れ、「熊本は豊富な地下水、そして半導体産業で繁栄している。そんな熊本にとって持続可能な社会に向けた取り組みを学ぶことはとても重要だ」と評価した。
AI×地域資源が描く持続可能な未来 熊本をモデルに
今後は、技術革新と地域資源の融合が、持続可能な社会づくりの中核を担っていくとみられる。
特にAIの進化は、環境モニタリングやエネルギー管理の高度化を通じて、地域単位でのSDGs推進を後押しする可能性が高い。
たとえば、熊本が持つ豊かな地下水資源や成長を続ける半導体産業は、今後、AIによる最適化技術との連携によって、環境負荷の低減と産業効率の向上を両立するモデルケースとなるかもしれない。
地下水の使用量をリアルタイムで管理したり、工場のエネルギー消費をAIで最適化したりする試みが具体化すれば、地域固有の課題を解決する新たな手段として注目されるだろう。
一方で、個人情報の取り扱いや雇用構造への影響といった課題への対応も不可欠となる。
今後、AI活用の議論は、倫理観や地域特性を踏まえた制度設計を軸に進むと予想され、単なる技術導入にとどまらず、地域社会全体を巻き込む取り組みが求められるようになるだろう。