セールスフォース、脱炭素業務支援にAIエージェント投入 海外の法定開示対応も簡略化へ

2025年7月3日、米セールスフォースは、脱炭素業務を支援するAIエージェント機能「Agentforce for Net Zero Cloud」の提供を正式に開始した。
温室効果ガス(GHG)排出量の可視化や開示資料の作成といった複雑な業務を自動化し、企業のサステナビリティー対応の負荷を軽減する。
AIがGHG排出量の算出や開示資料作成を支援
セールスフォースは、脱炭素領域に特化したAIエージェント「Agentforce for Net Zero Cloud」を新たにリリースした。
これは、同社のサステナビリティー関連クラウド「Net Zero Cloud」およびデータ統合基盤「Data Cloud」と連携し、企業が環境情報を効率的かつ正確に管理・活用できるようにする機能である。
このAIエージェントは、スマートメーターから取得したエネルギー使用量や、経費精算データから推定される社員の移動による排出量、サプライヤーの購買履歴をもとにしたスコープ3(※)の排出量など、複数のシステムにまたがるデータを自動で収集・解析する。
ユーザーは自然言語で質問するだけで、エネルギー効率の悪い設備資産の特定や排出量の要因分析を瞬時に行えるようになる。
さらに、EUの「CSRD(企業サステナビリティ報告指令)」や米国の「SASB(サステナビリティー会計基準審議会)」、国際的な開示プラットフォームである「CDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)」に対応した報告書作成にも対応する。
Net Zero Cloudに搭載された「情報ライブラリ」機能や関連文書と連携し、法定開示にも耐えうる報告書を短時間で自動生成できる。
※スコープ3:自社の直接排出(スコープ1)、購入した電力等の間接排出(スコープ2)以外の、サプライチェーンなどを含むその他すべての間接的な温室効果ガス排出。
企業の脱炭素戦略を支援 AI活用で精度とスピード向上
Agentforce for Net Zero Cloudの導入により、企業の脱炭素関連業務は飛躍的に効率化されると予想できる。
従来は複数部署にまたがるデータの収集や整形、報告書作成といった作業が人的リソースを圧迫していたが、AIによる自動化によって、この負荷を大幅に軽減できるだろう。
特にグローバル企業にとっては、CSRDなど国際的な開示要件への対応が喫緊の課題となっているため、本機能の導入は実務上の効果が大きいと思われる。
一方で、AIの導入により環境データの収集や開示業務がブラックボックス化するリスクもある。
透明性や説明責任の確保には、AIの判断根拠を追跡可能にする設計が不可欠であろう。
また、導入企業には一定のデータガバナンスや組織的な運用体制も求められる。
セールスフォースは、AIエージェント開発支援ツール「Agent Builder」も併せて提供しており、企業ごとの業務ニーズに応じたエージェント開発を可能にしている。
今後は脱炭素分野にとどまらず、広範なサステナビリティー施策への応用も視野に入れている。