AWSジャパン、旭川・富山高専と連携 AI人材育成で地域の課題解決へ

2025年6月25日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(AWSジャパン)は、旭川工業高等専門学校および富山高等専門学校と包括連携協定を締結したと発表した。
地域創生を担うAI人材の育成を目的とした取り組みで、クラウド教育の無償提供や産業連携を通じて、デジタル人材不足の解消を図る。
高専と連携、AI教育を通じ地域課題の解決目指す
AWSジャパンは、独立行政法人国立高等専門学校機構に属する旭川高専・富山高専と連携し、地域課題の解決を担うAI・クラウド技術人材の育成を推進する。
同社はこの協定を、全国で深刻化するデジタル人材不足と、地方における人口減少・産業活性化の両立に向けた施策の一環と位置づけている。
両高専は、政府が掲げる「Society 5.0(※)」に即した技術人財育成の拠点校でもあり、地域特性に応じた教育モデルの構築を進めてきた。
今回の協定により、AWSが提供するクラウド学習カリキュラム「AWS Academy」や、デジタルトレーニングサービス「AWS Skill Builder」などが教育に組み込まれることで、実践力ある学生の育成が期待できる。
また、企業連携型のインターンシップや、ハンズオン学習の機会も強化される予定で、クラウドスキルの習得を通じて地域活性化を支援するという。
AWSは日本国内で累計70万人超にクラウド教育を提供しており、本連携はその成果を地域に根ざした形で展開する新たな試みとなる。
この取り組みの最終目標は、地域課題に即応できるデジタル人材を3年間で100人以上輩出することにある。
矢久保考介・旭川高専校長は、「AWSの教材や体験を通して、学びを深化することが期待できる」と語り、農業や半導体関連など地域の基幹産業との連携を視野に入れた実装型教育の意義を強調した。
※Society 5.0: AIやIoTを活用し、サイバー空間と現実空間を融合させ、経済発展と社会課題解決の両立を図る未来社会の構想。
育成された人材が地域産業の高度化を牽引へ
日本企業の68%がAIスキルを持つ人材の確保を優先課題とする一方で、82%が人材の不足を課題としているため、AWSジャパンの教育機関との連携は、企業活動にも直接的な効果をもたらすとみられる。
教育現場のリソースを強化するだけでなく、地方の経済基盤にデジタル技術を根づかせる契機にもなり得るだろう。
今後は、他地域の高専や自治体との連携展開も視野に入っており、教育モデルの全国展開によるAI人材の地域分散育成が進めば、首都圏一極集中の是正にもつながる可能性もある。
もっとも、育成された人材が必ずしも地元に定着するとは限らない点は課題として残る。
都市部への就職や進学により、地域に還元されないケースも想定されるため、企業との就職連携や地元で活躍できる環境整備も、今後の重要な焦点となるだろう。