AIの暴走を防ぐ「ガーディアンエージェント」 ガートナーが2030年の中核技術と位置づけ

ガートナージャパンは2025年6月12日、企業におけるAI利用拡大とリスク管理において、「ガーディアンエージェント」が不可欠な存在になるとの見解を示した。2030年までにエージェント型AI市場の10〜15%を占めると予測している。
ガートナー、「AIを見張るAI」が企業の安全保障に
ガートナーは、AIの不適切な動作やデータ改ざんといったリスクに対し、AI自身が監視役を担う「ガーディアンエージェント」の導入が今後の鍵になると指摘した。
この技術は、AIと人間の間に“安全柵”を設ける役割を果たす。
具体的には、ガーディアンエージェントはAI出力のレビュー、行動監視、リスクある動作の自動制御を行う。
たとえば、誤情報の拡散や認証情報の乗っ取り、AIの意図しない自律行動といった事態を事前に察知し、対応を自動実行する。
同社は5月に実施したウェビナーで最高情報責任者(CIO)やITリーダー147人を対象に調査を行い、既に24%が12個未満のAIエージェントを導入済み、4%が12個以上導入していると回答した。さらに、過半数がAIエージェントの推進をしていることが分かった。
AIエージェントの将来的・現在的な用途としては、IT・人事・経理などの社内管理業務が52%、顧客対応業務が23%を占めており、日常業務の効率化と自動化が進む一方で、信頼性担保への関心も高まっている。
ガーディアンエージェントの重要性は、AI活用の拡大に伴うリスクの増大にある。とくにAIが意思決定に関与するシーンでは、誤判断による被害が業務全体に波及しかねない。
ガートナーはガーディアンエージェントの役割を「レビュアー」「モニター」「プロテクター」の3つに分類し、注目すべきだという。
レビュアーはAIが生成するコンテンツの正確性や適切性を判断し、モニターはAIの行動を追跡して問題検知を支援、プロテクターは必要に応じて権限の制御やブロックを実行する。
AIの番人は社会インフラとなるか
今後、AIのビジネス活用がより高度化・自律化していくなかで、AIのアウトプットや意思決定に対する“セカンドオピニオン”的な存在としてガーディアンエージェントの需要は確実に高まるだろう。特に、医療、金融、行政などリスクの大きい領域においては、この技術が信頼性と透明性の担保手段として不可欠になると考えられる。
一方で、技術標準の整備やガバナンスの枠組みが追いつかなければ、導入は一部の大企業に限られ、結果としてAI倫理の格差を広げる可能性もある。そのため、今後はガーディアンエージェントの設計原則や監査フレームワークの国際的共有が急務となる。
結論として、ガーディアンエージェントは「AIのためのAI」という発想に基づく次世代のセーフティレイヤーであり、AI社会における信頼構築の要と位置づけられていくだろう。
ただし、その実装には慎重な制度設計と倫理的配慮が欠かせない。