リップル、UBRIでブロックチェーン・RWA・AI研究支援 日韓台など6か国に7億円

2025年6月10日、米リップル社は、アジア太平洋地域の大学向け研究支援プロジェクト「UBRI」に約7億円を追加投入すると発表した。
日本や台湾、韓国など6か国の大学と提携し、ブロックチェーン、RWA、AIなど先端技術の学術研究を後押しする。
日韓台などの大学と連携し、分散型技術研究を強化
リップル社は、2018年に創設した大学向けブロックチェーン研究イニシアチブ「UBRI(University Blockchain Research Initiative)」の一環として、新たに500万ドル(約7億円)以上の資金を投入する。
支援対象は日本、台湾、韓国、シンガポール、オーストラリアなどの6か国に広がる。
日本では主に、京都大学とのパートナーシップを更新した。同大学は2019年からXRP台帳のノード運用を通じてリップルとの関係を築いてきた。
台湾では、国立高雄科技大学(NKUST)との新規提携が実現し、現実資産(RWA※1)のトークン化に関する研究が始動する。
この研究では、XRP台帳のクロスチェーン機能を活用しつつ、イーサリアムやソラナとの接続性、機関投資家の購入を促進するためのオン/オフランプ(※2)プロバイダーの役割などを検証する。RWA導入に向けた技術的・政策的な課題にアプローチする計画だ。
また、シンガポールでは、南洋理工大学およびシンガポール国立大学への助成を継続し、AIエージェントネットワークのブロックチェーン統合といった新領域の研究も支援する。
韓国の高麗大学では、シャーディング(※3)やNFTプライバシー保護などを研究する。
オーストラリアでは、国立大学とビクトリア大学への投資が総額130万ドルに達し、同国でも分散型技術の研究拠点形成が進む見通しだ。
※1 RWA(Real World Asset):現実世界の資産。不動産、株式、アート作品などをブロックチェーン上でトークン化したもの。
※2 オン/オフランプ:暗号資産と法定通貨の交換・入出金を行うサービス。トークン化された資産の実利用に不可欠なインフラ。
※3 シャーディング:ブロックチェーンを複数の部分に分割し、それらを並行して処理することで全体の処理能力を高める手法。
https://plus-web3.com/media/sharding/
RWA加速へ、制度と人材の壁を越えられるか
リップルのグローバル戦略を担うエリック・ヴァン・ミルテンバーグ氏は、「アジア太平洋地域は長年にわたりフィンテックとブロックチェーンのイノベーションの中心地であり、リップル社は設立当初からこの地域の優秀な学術人材に投資してきた」とコメント。
リップル社はこれまでに世界60校超と提携を結び、大学研究と実社会の接点づくりを推進してきた。
今回特に注目したいのが、RWA領域の発展である。
ブラックロックなど大手資産運用会社が注目する分野でもあり、今後は不動産や証券など現実世界の資産をトークン化する事例が加速する可能性がある。
一方で、RWAやAIエージェントネットワークといった先端テーマには、法制度の未整備や国ごとの規制のばらつきが依然として立ちはだかっている。各国で異なる金融当局の姿勢や教育機関の柔軟性にもばらつきがあるため、研究成果の国際的な共有や標準化に向けた調整は簡単ではないだろう。
この取り組みがうまくいくかどうかは、分散型社会における信頼性・相互運用性・人材循環の3要素をどうバランスよく育てられるかにかかっていると考えられる。リップルの継続的な資金投入と、地域ニーズに即した研究支援の柔軟性が試される局面に入ったと言えるだろう。