KDDIスマートドローン、平時と有事をつなぐ基盤へ SkydioのAI技術と連携加速

2025年5月29日、KDDIスマートドローンは自社主催のカンファレンス「KSD CONNECT 2025」にて、AIと通信を活用したドローンの社会実装の現状と展望を発表した。
防災や監視の即応力を高める自動運用モデルに注目したい。
Skydio連携で進化、災害時対応にも即応
KDDIスマートドローンは、2022年の事業開始以来、通信とドローンを組み合わせた多様なサービスを展開している。
自治体や企業との連携は延べ70自治体、460社を超え、累計飛行回数は1万回以上に達した。
災害対応の実績も重ねており、2023年には埼玉県秩父市での土砂災害孤立地域への物資輸送、2024年の能登半島地震では現場の可視化支援など、迅速なドローン活用が高く評価されている。
中核技術として導入が進むのが、米Skydio社製の次世代AIドローン「Skydio X10」である。
ビジョンセンサーと通信機能を搭載しており、複雑な現場でも自律飛行とリアルタイムの映像共有を行うことが可能だ。
災害、インフラ点検、監視業務での活用がすでに始まっており、特に石川県では豪雨や防災訓練での実証が進んでいる。
同社は5月29日から自動充電ポート「Skydio Dock for X10」を全国に展開し、ドローンを常時待機させる体制の構築を進めている。
平時は警備や施工管理、有事には被災状況の把握や救助支援へと即座に転用できる社会基盤の整備が狙いだ。
AI解析で現場判断を迅速化 制度整備も視野に
KDDIスマートドローンは、ドローンが収集するリアルタイム映像をAIで解析し、現場判断の迅速化と精度向上を図る構想を推進する。
その一例が、MODE社と共同開発するAIアシスタント「BizStack Assistant」との連携だ。
このツールでは、異常検知時にAIが映像を解釈し、言語化した警告を現場へ即時通知する仕組みが導入されている。
異常や被害の兆候をドローンが自動で検出・報告することで、人的負担の軽減と対応力の向上が期待できる。
一方、持続可能な運用のためには法制度の整備も急務だろう。
平時にドローンを過度に稼働させると、有事での即応体制に支障を来す可能性があるため、「待機率などを考慮した運用モデルを検証していく必要がある」と博野社長は語っている。
現在は石川県での取り組みを他自治体や民間へと横展開する構想を描いており、そのための民間主導の法整備や制度支援も検討中だ。
KDDIと提携するローソンをはじめ、警察署や消防署など公共施設へのドローンポート設置も視野に入れている。
技術の進化に加え、法制度や人材育成といった周辺環境の整備が求められる中、KDDIスマートドローンは「安心・安全なドローン社会の構築」に向けた取り組みを加速させていくと思われる。