東京工科大、私大最大規模のAIスーパーコンピューター導入 NVIDIA DGX B200を12基接続

2025年6月11日、東京工科大学(東京都八王子市)は、NVIDIAの最新アーキテクチャー「Blackwell」を採用したスーパーコンピューターシステムを導入すると発表した。国内私立大学としては最大規模の理論性能(FP8:0.9エクサフロップス)を持ち、10月より本格稼働予定である。
私立大学最大規模の理論性能を持つAI演算能力
東京工科大学は、スーパーコンピューター分野でNVIDIA製の最新システム「DGX B200」12基を導入し、「NVIDIA DGX BasePOD」アーキテクチャーに基づく環境を構築すると発表した。
このシステムは、「NVIDIA Quantum InfiniBand(※)」により高速接続され、AIに特化した演算性能(FP8)として0.9エクサフロップスを実現。これは国内私立大学としては最大規模の処理能力であり、研究・教育用途におけるAI利活用の本格展開を可能とする。
また、本システムはNVIDIAの企業向けAIソフトウェアスイート「NVIDIA AI Enterprise」も搭載。教育・研究現場において、最新のLLM開発やAI倫理研究、デジタルツイン設計など、多様な応用が可能となる構成だ。
東京工科大はこれにより、AI時代に即した次世代人材の育成と先端研究拠点としての地位確立を目指すとしている。
※NVIDIA Quantum InfiniBand:NVIDIA傘下のMellanoxが開発した高速ネットワーク技術。スーパーコンピューターや大規模AIクラスタ間のデータ通信を低遅延・高帯域で行うためのインターコネクト技術。
私大の研究基盤を変革 産学連携・AI倫理の実証拠点にも
東京工科大学が導入するスーパーコンピューターは、単なる教育・研究用途にとどまらない。学内向けの大規模言語モデル(LLM)開発環境や、AIガバナンスの検証基盤としても活用される予定だ。
特に、説明可能AI(XAI)による倫理的判断や法的信頼性の研究が進めば、国内のAI政策形成にも貢献する可能性がある。
加えて、「NVIDIA Omniverse」を活用したデジタルツイン環境によって、都市計画やスマートファクトリーの設計シミュレーションも視野に入る。これにより、自治体や企業との共同研究、つまり産学連携の加速が期待される。
一方で、運用コストや人材確保といった課題も存在する。AI開発に精通した技術者や、研究成果を社会実装に結びつけるマネジメント力が大学側に求められるのは言うまでもない。
今後の成果次第では、他大学にも同様の導入が波及する可能性があり、AI研究の地域間格差是正にも寄与すると考えられる。