アルトマン氏のブロックチェーン「ワールド・チェーン」 ドルと連動するUSDCをネイティブ発行可能に

2025年6月11日、OpenAI創業者サム・アルトマン氏が手がけるワールド・ネットワークは、サークル社と連携し、USDCのネイティブ発行とクロスチェーンサービスを追加した。既存の200万人ユーザーの資産も新仕様に自動アップグレードされた。
ネイティブUSDC導入でサードパーティ不要に
サム・アルトマン氏が共同創設したワールド・ネットワークのブロックチェーン「ワールド・チェーン」が、ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」のネイティブ発行に対応したことを発表した。
これにより、これまでブリッジ経由で運用されていたUSDCが、サークル社による直接発行形式に切り替えられる。
ワールド・ネットワークは、もともと「ワールドコイン」と呼ばれていた構想で、ユーザーの虹彩をスキャンし、デジタルIDで個人を認証する新しいグローバル経済システム構想だ。
専用デバイスを用い虹彩情報を登録することで、高いレベルでの個人認証を可能にし、AIボットと人間を正確に区別することができる。
ワールドチェーンは、その経済システムの基盤となるブロックチェーンだ。
今回の連携で企業ユーザーは、サークル・ミント(※)を利用し、法定通貨とUSDCの間で双方向の変換が可能になる。
レイヤー2上で直接変換を実行できるため、サードパーティのブリッジや外部取引所を介する必要がなくなり、資金移動の安全性と即時性が向上する。
すでにワールド・ネットワーク上には約200万人のユーザーがUSDCを保有しており、全てが新仕様にアップグレードされた。
これにより、安定したステーブルコインを用いたグローバル送金や取引が、さらに効率的に行えるようになると期待できる。
またワールド・チェーンは同時に、サークル社のクロスチェーン・トランスファー・プロトコル(CCTP V2)にも対応を開始した。
これにより、ユーザーや開発者はUSDCを複数のチェーン間で自在に移動させることができる。
特に、オンチェーン・トランザクションにおける即時性と透明性に関しては、シナジーが期待できる。
※サークル・ミント:米Circle社が提供するUSDC発行プラットフォーム。企業が法定通貨をUSDCに変換し、ブロックチェーン上で発行・回収できる仕組みを提供している。
ワールドネットワークのポテンシャルと懸念
グローバルな資金移動を支える金融インフラとして、ワールド・チェーンとUSDCの組み合わせは高い将来性を持つと考えられる。
アルトマン氏が展開するワールド・ネットワークは、すでにVisaとの提携により、電子ウォレットや本人認証サービスなど、銀行に近い機能も提供しているため、エコシステムの拡張性は大きいだろう。
しかし、クロスチェーンの即時性は歓迎される反面、チェーン間の資金移動におけるハッキング被害や不正アクセスの危険性は依然として残る。
DeFi市場全体で橋渡し部分の完璧な設計は難しく、完璧な安全性を保証するには時期尚早であるとも言える。
とはいえ、ワールド・ネットワークのような「アイデンティティ+送金+ステーブルコイン」の複合サービスにおいて、USDCという法定通貨にペッグされた安定資産の存在は不可欠であり、今後の採用拡大に寄与する見込みだ。