2026年7月8日、日本のリコージャパンとリコーITソリューションズは、兵庫県神戸市の庁内AI基盤「KOBE AI PORT」の構築・導入を支援したと発表した。LGWAN環境から安全に生成AIを利用できる基盤を整備するとともに、ノーコードAI開発基盤「Dify」を活用した業務アプリケーションの開発を支援し、自治体DXの高度化を後押しする。
神戸市、LGWAN対応AI基盤を本格運用
神戸市は、生成AIをより実務で活用するための新たな庁内AI基盤「KOBE AI PORT」を導入した。リコージャパンがプロジェクト全体の推進とDify(※1)のライセンス提供を担当し、リコーITソリューションズがLGWAN(※2)環境で安全に利用できるAI基盤とポータルサイトの構築を支援した。
従来は、行政専用ネットワークとインターネット環境が分離されていたため、ファイル移動などの手作業が発生し、生成AIの活用を妨げる要因となっていた。また、職員ごとのプロンプト作成能力の違いによって回答品質に差が生じる課題もあった。
KOBE AI PORTでは、LGWAN環境から直接アクセスできるため、通常業務で利用する端末から生成AIを活用できる。ポータルには条例や規則、市会議事録などを検索できるチャット機能のほか、プロンプト集や業務別アプリケーションを搭載した。さらに、議事録作成、アンケート集計、音声解説生成などのAIアプリケーションも提供され、職員自身によるノーコード開発も進められる環境となっている。
※1 Dify:ノーコードで生成AIアプリケーションやAIエージェントを開発できるオープンソースのLLMアプリケーション開発基盤。企業や自治体で業務特化型AIの構築に活用されている。
※2 LGWAN:地方自治体や政府機関を結ぶ行政専用ネットワーク。インターネットから分離された閉域網であり、高いセキュリティを維持しながら行政情報を扱うために利用される。
自治体AI普及では内製化の重要性が高まる
今回の取り組みで注目されるのは、自治体が生成AIを「利用する」段階から、「自ら業務に合わせて開発する」段階へ移行する動きを後押ししている点である。現場の職員が必要な機能をノーコードで追加できるようになれば、業務改善のスピードは継続的に高まる可能性がある。
一方で、生成AIの普及には課題も残る。回答内容を過信すれば行政判断の誤りにつながる恐れがあり、情報の更新や品質管理、人材育成も継続的に求められる。AI基盤を導入するだけでは十分とは言えず、運用ルールの整備や最終確認を担う体制づくりも重要になると考えられる。
リコーグループでは社内で約9,500件のDifyアプリケーションを開発してきた実績があり、そのノウハウを自治体へ展開する取り組みも進められている。神戸市の事例で業務効率化や定着が進めば、セキュアな生成AI基盤の導入モデルとして他自治体へ波及する可能性があり、自治体DXの有力な選択肢の一つとなるかが今後の注目点となりそうだ。
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