2026年6月12日、SCSKはAIネイティブな次世代ERP「PROACTIVE」の新ラインアップとして、製造実行システム「PROACTIVE MES」の提供開始を発表した。生成AI「Gemini」などを活用し、製造現場と経営の情報断絶を解消することで、製造業のDXと迅速な経営判断を支援する。
AI活用MESで計画と現場の分断を解消
SCSKが新たに投入した「PROACTIVE MES」は、製造現場の実行管理に必要な「順序計画」「作業指示」「進捗管理」「実績収集・分析」「品質管理」を標準搭載したプラットフォームである。AIネイティブERP「PROACTIVE」と連携し、生産計画から実行、会計までを一気通貫で管理できる点が特徴だ。
製造業では、人手不足や多品種変量生産への対応が求められる一方、現場ごとに設備や工程が異なることからMESの標準化が進まず、Excelによる管理や個別開発に依存するケースも少なくなかった。その結果、ERP上の計画と現場実績が分断され、原価把握の遅れや納期回答の精度低下、設備トラブルへの対応遅延といった課題が顕在化していた。
PROACTIVE MESでは、AIが作業者のスキルやシフト、設備の稼働状況を踏まえて最適な作業順序を自動立案する。また、AI-OCRによって作業指示書や検査記録をデータ化し、転記作業を削減。Google Cloudの生成AI「Gemini」を搭載した4M分析ダッシュボードでは、人・機械・材料・方法の観点から現場データを分析し、改善アクションをレポート形式で提示する。
さらに、自社の「PROACTIVE 生産管理」との標準連携に加え、WEB APIやETLによって他社製ERPとの接続にも対応する。既存システムを活用しながら導入できる柔軟性も備えている。
AI主導の工場運営へ、定着が成否を左右
今回の発表は、ERPとMESの連携強化にとどまらず、製造現場の意思決定そのものをAI主導へ移行する流れを加速させる可能性がある。現場の実績情報がリアルタイムで経営に反映されれば、原価や在庫のズレを迅速に把握でき、納期変更や設備トラブルへの対応力向上にもつながる。属人化の解消や技能継承の支援も期待され、人材不足に悩む製造業にとっては大きなメリットとなる可能性がある。
一方で、AIの提案を現場がどこまで受け入れられるかは課題として残りそうだ。熟練工の経験則との整合性や、既存業務の見直し、データ品質の維持、従業員への教育には一定の時間とコストを要する可能性がある。システム導入だけでは期待した効果を十分に引き出せないケースも考えられ、現場への定着を見据えた運用設計が重要になる可能性がある。
SCSKは今後、AI-OCRの適用範囲拡大や、チャット形式による分析支援機能の追加を予定している。こうした機能拡充によって、製造現場の知見をAIへ取り込みながら「勘と経験」への依存を軽減できるかが注目される。日本の製造業DXでは、現場と経営をつなぐAI活用の成熟度が、今後の競争力を左右する要素の一つになる可能性がある。
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