山口県の獺祭と三菱重工は、国際宇宙ステーションを用いた清酒醸造試験の完了を発表した。
日本の官民連携により宇宙空間での発酵を実証し、完成した酒は1億1000万円で販売される。
ISSで清酒発酵、人類初の宇宙醸造
獺祭と三菱重工は2026年4月28日、月面での酒造りを目指す「獺祭MOONプロジェクト」の第一弾ミッションが完了したことを公表した。
国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟において、月面重力を模擬した環境でのアルコール発酵過程の確認に成功しており、人類史上初となる宇宙空間での清酒醸造の実証となった。
試験では約2週間にわたり発酵が行われ、終了後にもろみは冷凍保存された。
その後、2026年2月に地球へ帰還し、翌3月に山口県の本社蔵で清酒として仕上げられている。
分析の結果、アルコール度数は12%に到達し、地上と同様の製造プロセスが成立することが確認された。
一方で、軌道上データからは発酵の進行が地上より緩やかであることも観測された。
重力条件が発酵速度に影響する可能性が示されており、詳細は今後の研究課題としている。
酒粕については、東北大学東谷研究室の協力のもと成分解析が進められ、酵母の変化や地上製造との差異を検証する予定だ。
完成した清酒は約116mlで、そのうち100mlがチタン製ボトルに詰められ、税込1億1000万円で販売された。売上は日本の宇宙開発に寄付される計画である。
本ミッションはJAXAの「きぼう有償利用制度」を活用し、複数の日本企業と研究機関が関与した。
輸送にはH3ロケットと補給機HTV-X1号機が使用され、宇宙飛行士による運用も含め、日本主体の体制で進められた点が特徴である。
宇宙発酵の意義と実用化の壁
今回の成果は、宇宙環境において発酵という生物プロセスを制御できる可能性を示した点で評価できる。
食品分野に限らず、発酵技術は医薬や素材開発にも応用余地があり、宇宙産業の広がりに寄与する可能性がある。
ただし、現時点では実験規模にとどまり、量産や安定供給には課題が残るとみられる。
特に発酵速度の変化や環境依存性は品質のばらつきにつながる懸念があり、精密な制御技術の確立が求められる状況といえる。
また、今回の販売は象徴的価値が強く、一般市場への普及とは異なる位置付けと捉えられる。
高額商品としての希少性は注目を集める一方で、継続的な需要創出には別の戦略や文化的受容の検証が必要だろう。
それでも、月面生活を見据えたQOL向上という観点では、新たな価値創出の契機となり得る。
宇宙での食や嗜好品の確立は長期滞在に直結する要素であり、今後の技術蓄積によって実用化への道筋が現実味を帯びてくるだろう。
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