OpenAIがDeepSeekのAI学習に米モデル蒸留疑い指摘 米中AI競争の新局面

2026年2月12日、米AI企業のOpenAIが米下院の米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会へ提出したメモで、中国AIのDeepSeekが米モデルを学習に利用していると警告したとロイターが報じた。米中AI競争の実態が改めて浮き彫りになった。
米モデル蒸留疑惑、実態が浮上
OpenAIは、DeepSeekが同社や米研究機関のAIモデルを対象に、能力を模倣し自社AIの学習へ利用している可能性があると指摘した。新しいモデルの質問を既存モデルに投げ、得られた出力を学習へ反映させる「ディスティレーション(蒸留)(※)」の手法が用いられた疑いがあるとしている。
提出されたメモでは、DeepSeek関係者とみられるアカウントがアクセス制限を回避し、難読化された第三者ルーターなどを通じてモデルへ接続していた可能性があると説明された。さらに、出力をプログラム的に取得し蒸留に用いるコードの存在も把握しているとされる。
同社はまた、中国の大規模言語モデル(※)について、安全な訓練や展開の面で十分な配慮が行われていないとの懸念も示した。競合モデルの開発に自社技術が利用される動きを検知した場合、アカウント削除などの措置を講じているとしている。
※ディスティレーション(蒸留):既存AIモデルの出力を活用し、新たなモデルへ知識や判断傾向を移す学習手法。効率化に寄与する一方、知財や安全性の議論を伴う。
※大規模言語モデル:膨大なテキストデータで学習し、文章生成や対話を行うAI基盤技術。生成AIの中核として産業利用が急速に広がっている。
技術競争の恩恵と分断リスク
蒸留技術の活用は、AI開発の効率を高める点で大きな利点がある。既存モデルの知見を応用できれば開発期間やコストを抑えられ、新興企業でも高性能AIを構築しやすくなる。今回のような事例は、AI開発のスピード競争が新段階に入ったことを示す動きとも言える。結果としてAIの普及が加速し、産業全体のイノベーションを促す可能性がある。
一方で、競合モデルの能力を無断で取り込む形になれば、知的財産や契約順守の問題が生じる。高度なAIは軍事・産業用途への転用余地も大きく、技術流出や安全保障リスクへ直結しかねない。企業間の信頼関係が損なわれ、国境をまたいだ技術協力が停滞する懸念もある。
今後は、AIモデルの利用条件やアクセス管理の厳格化が進むとみられる。各国政府が関与する形で規制や国際ルール整備が進む可能性もある。技術革新を促す競争と、分断を招く管理強化のバランスが問われる局面に入ったと言える。
関連記事:
エヌビディア、ディープシークのAI開発支援か 中国軍利用をロイターが報道

ディープシーク、AI学習費用29万ドルと公表 米国製モデルを大幅に下回る水準












