OIST、AIが「独り言」で学習能力向上 自己対話型トレーニングを開発

2026年1月28日、沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、AIが自己対話を行うことで学習能力と汎化性能を高める新たなトレーニング手法を開発したと発表した。人間の思考過程に着想を得たこの研究は、AI学習の在り方を変える可能性を示している。
OIST、自己対話と記憶でAIの汎化性能を向上
OISTの研究チームは、AIが内部で「独り言」を行うインナースピーチと、情報を一時的に保持するワーキングメモリ(※)を組み合わせた学習手法を提案した。
研究成果は学術誌『Neural Computation』に掲載され、自己対話が学習プロセスに与える影響を定量的に示している。
実験では、複数のタスクを横断する課題を設定し、異なる記憶構造や学習条件を比較した。
その結果、複数のワーキングメモリスロットを備え、一定回数の自己対話を行うAIモデルは、順序反転やパターン再構成といった複雑な問題でも高い性能を示した。
単一タスクへの最適化にとどまらず、未知の課題にも対応できる汎化能力が確認された形だ。
筆頭著者のジェフリー・クワイセア博士は、学習はモデル構造だけでなく、トレーニング過程に組み込まれた相互作用の設計によっても形づくられると指摘する。
自己対話を促すデータ構成が、AIの内省的な学習を後押ししたと考えられる。
※ワーキングメモリ:情報を短時間保持し、判断や操作に利用する記憶機構。人間の認知機能の中核であり、AIではタスク汎化との関係が注目されている。
軽量AIへの期待と現実環境での課題
この手法のメリットとして注目されるのは、汎化学習に通常求められてきた膨大なデータ量を必ずしも前提としない点である。
少量データでも学習が成立する可能性は、計算資源が限られるロボットやエッジAIにおいて、新たな応用の選択肢を広げるものと考えられる。
家庭用や農業用ロボットなど、現場適応力が求められる分野での活用が期待される。
一方で、デメリットも無視できない。
現実世界はノイズが多く、環境が絶えず変化するため、実験環境で有効だった自己対話の設計がそのまま機能するとは限らない。
自己対話の頻度や内容によっては、計算負荷の増大や誤った推論を強化してしまうリスクも想定される。
今後は、より複雑で不確実性の高い環境での検証が重要になるだろう。
人間の発達的学習に近い形で、AIが「よりよく学ぶために学習する」段階へ進めるかどうかが、次世代AIの競争力を左右する要素の一つになる可能性がある。
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