シンガポール、AI国家戦略を本格始動 5年で1200億円超を研究と人材に投資

シンガポール政府は、公的なAI研究のため、今後5年間で10億シンガポールドル(約1210億円)超を投じる方針を示した。国家主導でAI産業基盤を強化する姿勢が鮮明になっている。
シンガポール、AI研究に10億Sドル投入と正式表明
シンガポールは、公的なAI研究に今後5年間で10億シンガポールドル、日本円で約1210億円を投じる計画を明らかにした。
2026年1月24日、テオ・デジタル開発・情報相が国内で開催された業界イベントの演説で発表した内容である。
同相は、この投資がAI研究ハブ(※)としての地位強化に寄与すると述べ、国家として研究競争力を高める姿勢を強調した。
投資資金は、AI研究センターの新設やAI能力の構築、国内の人材育成パイプラインの整備に充てられるという。
本件の背景には、世界各国でAI産業が高まっている状況がある。
たとえば、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)などは、「ファルコン」などの国内モデルに資金をつぎ込んでいる。日本やカナダ、インドも、独自の国内AI戦略と能力構築に取り組んでいる。
そうした波に乗り遅れないよう、シンガポールも競争力を確保する取り組みを急いでいる。
デジタル開発・情報省も声明で、「研究はAIの取り組みにおける主要な推進力であり、国家の高度な技術能力を向上させ、シンガポールがAIイノベーションの最前線にとどまることを確実にする」と述べた。
※AI研究ハブ:大学・研究機関・企業が集積し、基礎研究から社会実装までを一体的に進める拠点。人材と資金の集中が国際競争力の源泉となる。
国家主導AI投資の効果と限界 競争力強化とリスクの両面
今回の投資拡大は、シンガポールにとって明確なメリットをもたらす可能性がある。
研究資金と人材が集積することで、スタートアップ創出や外資系企業の研究拠点誘致が進み、AI関連産業のエコシステム形成が加速すると考えられる。
一方で、国家主導の大型投資にはリスクも伴う。研究成果が商業化や生産性向上につながらなければ、限られた財政資源の効率性が問われることになるだろう。
また、AI人材の国際獲得競争が激化する中で、育成した高度人材が国外へ流出する懸念もある。韓国や中東諸国、日本なども独自のAI戦略を進めており、競争環境は今後さらに厳しさを増す見通しだ。
それでも、AIを中長期の国家成長戦略の中核に据えた今回の方針は、シンガポールがAI競争で存在感を維持・拡大するための重要な布石となり得る。
今後5年間で、投資が実質的な成果として結実するかが最大の焦点となるだろう。
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