米下院、AI半導体輸出を議会監視へ 安全保障を軸に新法案が前進

2026年1月21日、米国下院外交委員会は、AI向け半導体の輸出管理を強化する法案「AI Overwatch Act」を委員会で可決した。海外向けAIチップ輸出に対する議会の関与を制度化する動きであり、米国の技術安全保障政策が新局面を迎えている。
AI半導体輸出を議会監視下に、超党派法案が委員会可決
米下院外交委員会は1月21日、人工知能(AI)向け半導体の輸出管理を強化する「AI Overwatch Act」を賛成42、反対2で可決した。
同法案は共和・民主両党による超党派提出で、国家安全保障上の懸念がある国・組織向けの戦略的AIチップ輸出に対し、議会の監視や承認を明確に位置付ける点が柱となる。
法案はフロリダ州選出のブライアン・マスト下院外交委員長が主導し、2025年12月に提出された。
これまでAI半導体の輸出管理は主に商務省など行政府の裁量に委ねられてきたが、本法案では特に「敵対国」向けと判断される案件について、議会の関与を制度として組み込む。
高度なAI半導体技術の流出を抑止し、軍事利用やサイバー作戦への転用を防ぐ狙いがある。
米国では、中国やロシアへの先端半導体流出を巡る議論が長年続いてきた。AIチップが経済競争力だけでなく軍事・安全保障に直結するとの認識が広がっている。
規制強化の効果と懸念、AI覇権を巡る今後の焦点
AI Overwatch Actの導入によって期待される効果の一つは、先端AI半導体の国外流出に対する抑止力が相対的に高まる点にある。
議会が輸出承認プロセスに関与することで、判断過程の透明性や政治的な説明責任が強まるとの見方もあり、短期的な経済合理性だけでなく、長期的な国家安全保障を重視する判断が促される可能性がある。
一方で、規制強化に伴う副作用も指摘されている。
反対派の議員らは、議会の関与拡大が行政府の権限との緊張を生み、輸出承認プロセスを複雑化させる恐れがあると懸念する。
意思決定が長期化した場合、米半導体企業の国際競争力や、同盟国との技術協力に影響が及ぶ可能性も否定できない。
現在、米国は輸出管理分類番号(ECCN)(※)を基軸とした行政主導の枠組みによって、先端AIチップを多層的に管理している。
今後、本法案が成立すれば、こうした行政措置に議会による監視が加わる形となり、AI半導体を巡る政策判断は従来以上に政治的要素の影響を受けやすくなるとみられる。
安全保障と産業競争力をいかに両立させるかが、米国のAI戦略における重要な論点として浮上しそうだ。
※輸出管理分類番号(ECCN):米国商務省が定める輸出管理上の分類番号。製品や技術の軍事転用可能性などに基づき規制水準を定め、先端半導体やAI関連技術も対象に含まれる。
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