米48州でAI規制が進行 連邦法なき時代に広がる州主導ルール

2026年1月18日、米国で人工知能(AI)の利用や開発を独自に規制する州法を制定した州が48州に達したことが分かった。読売新聞の調査によるもので、生成AIによる偽情報拡散や自殺助長が社会問題化する中、連邦レベルの統一法が存在しない米国では州主導の規制が先行している。
米48州がAIを独自規制 ディープフェイクや自殺対策が焦点
米国では全50州のうち48州が、AIの利用や開発に関する何らかの規制を州法として導入している。
調査は各州の公表資料や米NGO「透明性連合」の情報を基に行われ、生成AIへの懸念が制度化を強く後押ししている実態が明らかになった。
州法制定の動きは2020年頃から本格化し、第2次トランプ政権が発足した2025年1月以降は一段と加速した。
直近1年で30州が新たに法律を制定し、少なくとも13州では違反した開発企業や提供事業者に罰則を科す規定が盛り込まれている。
規制内容で最も多いのは、生成AIによる偽画像や動画「ディープフェイク(※)」への対策だ。アーカンソー州はわいせつなディープフェイクの制作・配信を刑事罰の対象とし、モンタナ州は投票日60日前から選挙関連資料での使用を禁止した。
また6州ではAIチャットボットを規制し、若者の自殺を助長したとされる事例への対応を強化している。
カリフォルニア州では、利用者が自殺に言及した場合の適切な対応を事業者に義務付けた。
医療分野のなりすまし対策や、公的機関でのAI利用制限も複数州で導入されている。
※ディープフェイク:生成AIを用いて人物の顔や音声を合成し、本物と見分けがつかない画像や動画を作成する技術。偽情報拡散やなりすましへの悪用が問題となっている。
分散規制の功罪 安全確保とAI競争力の行方
州主導のAI規制は、被害防止という観点で一定の即応性を持つ可能性がある。
選挙の信頼性確保や未成年者保護など、地域ごとの課題に即した対応を迅速に講じられる点は、社会不安の抑制に寄与する側面があると考えられる。
一方で、州ごとに異なるルールが乱立する状況は、企業活動に無視できない負担を生じさせる恐れがある。
開発企業は複数の法体系への対応を迫られ、結果としてコスト増や技術開発のスピード低下につながる可能性が指摘されている。
実際、トランプ大統領は過度な規制がAI競争力を損なうとして否定的な姿勢を示し、州法を無効化する連邦法制定を視野に入れている。
EUが包括的なAI法を施行し、日本が理念法にとどめたのとは対照的に、米国は分散型規制という独自の道を選択している。
このモデルが安全性と技術革新をどこまで両立できるのか、あるいは将来的に統一ルールへの回帰を促すのかは、国際的なAI秩序を占う重要な論点となりそうだ。
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