エヌビディア×イーライリリー AI創薬研究施設設立 10億ドルを投じる計画

2026年1月12日、米半導体大手エヌビディアと製薬大手イーライリリーは、米カリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアに新たな共同研究施設を設立すると発表した。今後5年間で総額10億ドルを投じ、AIを活用した創薬研究を本格化させる。JPモルガン・ヘルスケア会議で明らかになった海外の動きだ。
両社が共同研究施設を設立、AI半導体で創薬を高度化
新設される研究施設では、エヌビディアの最新世代AI向け半導体(※)「ベラ・ルービン」が採用される。両社の研究者が協働し、バイオテクノロジー向けAIモデルの学習に必要な新規データを生成する点が特徴となる。施設の具体的な所在地は、2026年3月に公表される予定だ。
イーライリリーは数カ月前、エヌビディアの現行世代半導体「グレース・ブラックウェル」を1000個以上用いたスーパーコンピューターを構築中だと発表していた。今回の投資計画は、その計算基盤をさらに発展させ、研究体制を恒常的な拠点として固定化する狙いがある。
同社は、新たな治療法の設計や候補物質の探索に高度なAIモデルを積極活用し、新薬開発に要する時間短縮を目指す製薬企業の一角を占める。なお、エヌビディアの投資資金が自社半導体の購入に充てられるかなど、資金面の詳細は開示されていない。
※AI向け半導体:大量のデータを高速かつ並列に処理するために設計された半導体。生成AIや創薬シミュレーションなど、高度な計算を必要とする分野で不可欠とされる。
AI創薬の加速と限界 計算力主導モデルの行方
今回の取り組みは、創薬プロセスを計算資源中心に再設計しようとする試みとして注目される。
エヌビディアが提供するオープンソースのAIモデルやソフトウエアを活用することで、製薬会社が自社専用の創薬基盤を構築しやすくなり、研究の内製化や効率化が進む可能性がある。
また、AIで設計された医薬品が実際の研究所で合成可能かを検証する更新版モデルの発表は、仮想空間と現実の研究工程を接続しようとする動きの一環と位置づけられる。
こうした仕組みが定着すれば、研究工程の再現性や標準化に寄与するとの見方もある。
一方で、AIの予測精度は学習データの質に大きく依存し、臨床試験や規制対応といった工程は引き続き時間とコストを要する分野である。
計算力への依存が進むことで、研究アプローチの多様性が制約されるとの懸念も指摘されている。
半導体企業が創薬分野に深く関与する現在の構図が、どこまで業界全体に広がるかは、今後の成果と実用化の進展次第と言える。
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