畜産現場はどう変わるか 監視カメラ一体型AI分娩検知「牛わか+++」始動

2026年1月5日、日本国内向けに非接触式分娩検知システム「牛わか」の進化版となる「牛わか+++(プラス)」が販売開始された。監視カメラとAI解析を一体化し、低コストかつ多機能な分娩管理を実現する点が特徴となっている。
監視カメラ一体型AI分娩検知「牛わか+++」発売
「牛わか+++」は、2021年から展開されてきた非接触式分娩検知システム「牛わか」の後継モデルとして位置づけられる新製品である。
最大のポイントは、分娩検知専用機器ではなく、監視カメラそのものに高度なAI解析機能を搭載した点にある。
牛にセンサーを装着する必要がなく、母牛へのストレスや作業負担を抑えた設計を維持している。
開発の背景には、生産者から寄せられた「導入コストを抑えたい」「分娩以外にも使える機器がほしい」といった要望があった。
子牛価格が回復基調にある一方、飼料価格の高騰は続いており、経営環境は依然として厳しい。
こうした中で、ICT活用による省力化とアニマルウェルフェア(※)の両立が求められている。
本製品は初期導入費を1台30万円~に抑え、繁殖規模や分娩房数に応じて複数台を柔軟に構成できる。
高画質映像やスマートフォンからの遠隔操作、SIM内蔵による通信工事不要といった監視カメラとしての機能も充実しており、分娩時以外の牛舎管理にも活用できる。
AIによる検知性能も強化されている。32生産者・306頭を対象とした実証実験では、分娩当日の検知確率93%を記録した。
見守り開始から最短3時間で分娩兆候を検知し、LINEやメールで通知する仕組みにより、分娩の見逃し防止を図る。
※アニマルウェルフェア:家畜を健康かつ快適に飼養し、苦痛やストレスを最小限に抑えるという考え方。近年は持続可能な畜産経営の重要な指標となっている。
低コスト多機能化の価値と、AI依存のリスク
「牛わか+++」の大きなメリットの一つは、分娩管理と日常監視を一体化することで、設備投資の効率向上を図っている点にあると考えられる。
安価なカメラを複数設置できる構成は、分娩時期が重なっても対応しやすく、少人数で運営する繁殖農家において省力化に寄与する可能性がある。
移設の容易さも含め、現場運用を強く意識した設計と言えるだろう。
一方で、AI検知に過度に依存することへの懸念も指摘できる。
検知率93%は高水準ではあるものの、残る数%の見逃しリスクを完全に排除できるわけではない。
最終的な判断を人が担う体制を維持しなければ、技術への過信が経営リスクにつながる可能性も否定できない。
将来的には、分娩検知にとどまらず、行動分析や疾病兆候の把握といった領域への応用も視野に入るだろう。
監視カメラとAIを組み合わせたエッジ型ICTは、畜産DXの基盤技術の一つになり得る。
「牛わか+++」は、コストを重視した現実的な選択肢として、畜産現場のデジタル化を一段押し進める存在になる可能性がある。
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