森永乳業、社長の思考をAI化 全社員が使う「AI大貫さん」導入の狙い

2025年12月25日、森永乳業は代表取締役社長・大貫陽一氏の発言や思考を学習させた社内向けAI「AI大貫さん」を、国内の全社員に導入したと発表した。日本企業における“社長AI”の全社展開は、DXの新たな局面を示す取り組みだ。
森永乳業、社長の判断軸を学ぶAIを全社員に展開
森永乳業が導入した「AI大貫さん」は、代表取締役社長である大貫陽一氏の過去の発言や意思決定の考え方を取り込み、社員が業務上の判断に迷った際の参考として活用できるAIツールである。2025年12月25日から全社員向けに使用が開始され、社内の共通基盤として位置づけられた。
同社は2019年に策定した「森永乳業グループ10年ビジョン」の実現に向け、デジタル技術を活用した経営基盤の強化を進めてきた。今回のAI導入も、その流れの延長線上にある施策だ。単なる業務効率化ではなく、経営層の思考や価値観を組織全体で共有する点に特徴がある。
背景には、社内で「デジタル技術を業務でも積極的に活用したい」という機運が高まっていたことがある。森永乳業は2024年に「DX(※)宣言」を掲げ、全社員向けの教育プログラム「DXアカデミー」を開講したほか、原材料価格変動シミュレーションの高度化や請求書デジタル化などを段階的に実施してきた。
経営層の考えを“知識”として蓄積し、必要なときに参照できる環境を整えることで、社員一人ひとりの意思決定の質を高める狙いがある。
※DX(デジタルトランスフォーメーション):デジタル技術を活用し、業務効率化にとどまらず、組織文化や意思決定のあり方そのものを変革する取り組みを指す概念。
経営AIは組織を強くするか 利点とリスク、今後の行方
この取り組みのメリットの一つとして、経営トップの視座を社員が疑似的に体験できる点が挙げられる。
判断に迷った際の参考軸が可視化されることで、現場主導で意思決定を進めやすくなる可能性がある。
経営の考え方が共有されることで、部門間の認識のずれを抑える効果も期待できそうだ。
一方で、デメリットも想定される。AIの回答が「社長の正解」として受け取られ過ぎた場合、現場の創意工夫や多様な意見が表に出にくくなるリスクは否定できない。
経営判断は状況や時代によって変化するため、AIの学習内容や更新頻度をどのように管理するかは、運用上の重要な論点となる。
それでも、経営知を属人化させず、組織の中で共有・活用しようとする姿勢は、日本企業におけるDXのあり方を再考させる試みと言える。
今後は、AIを「代替者」ではなく意思決定を支える補助線として、どのように使いこなすかが問われるだろう。
森永乳業の実践は、他企業にとっても経営とAIの関係を考える一つの参考事例になると考えられる。
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