ウェザーニューズ、AIで船長の運航判断を支援する新サービス開始

2025年12月25日、株式会社ウェザーニューズは次世代型運航支援プラットフォーム「SeaNavigator for Master」の提供開始を発表した。海上の通信環境改善を背景に、世界初となる船長向けの対話型AIが航路や気象リスクの判断を支援するサービスである。
船上でAIが航路判断を支援、リアルタイム運航情報を提供
「SeaNavigator for Master」は、船長がウェザーニューズの専門家に相談する感覚で運航に関する質問ができる対話型AI「AI Agent」を搭載した航海支援サービスである。
船上から波・風予測や台風進路、燃費・速度予測を高解像度で確認可能で、航海ルートシミュレーションにより最適な航路を瞬時に検索することが可能だ。
従来は船陸間の情報格差が課題であったが、本サービスでは船上と陸上の運航管理者間でチャットを通じた承認が可能となり、リアルタイムで航海計画を共有・更新できる。これにより船長は、膨大なデータを基に安全性・経済性・定時性を考慮した判断を行いやすくなった。
ウェザーニューズは約40年にわたり航海気象サービスを提供しており、1994年には世界初のオフライン型オンボードシステムを開発して船長の気象判断を支援してきた。
近年の通信環境改善を受け、2012年以来となるオンボードシステムの刷新を実施し、船長の利便性を第一に考えた「SeaNavigator for Master」の開発に至った。
欧州や日本を含むアジアの先行導入事例でも、メール依存から脱却し船陸間の意思決定が迅速化されたことが確認されている。今後は累計100万航海のサポート実績を活かし、AI Agentや航海ルートシミュレーションの精度向上や機能拡張を進める予定である。
AI導入で航海効率と安全性向上、運航判断の変革も
船上での対話型AI活用は、運航効率と安全性の向上につながる可能性が高い。
船長は膨大な海象データを即時に参照できるため、リスクを事前に把握しつつ、燃料消費や航行時間を最適化した判断が可能になるだろう。従来の情報遅延による判断ミスのリスクも低減されると考えられる。
また、船陸間チャットによる承認フローの効率化は、業務全体のスピードアップやコミュニケーションコスト削減をもたらす。これにより、従来のメール中心の運航管理からデジタル化が加速し、海運業界のDX推進にも寄与すると予測できる。
一方で、AI助言への依存度が高まることにより、船長自身の経験判断とのバランス調整が求められるだろう。AIが提案するルートやリスク評価はデータに基づくが、突発的な海象変化や船舶特性に応じた判断は依然として人の判断力が重要となりそうだ。
今後は、AIの高度化やルートシミュレーション精度向上により、グローバル規模での航海判断支援が広がる可能性がある。船長の判断力を補完しつつ、航海安全性と運航効率の両立を実現するプラットフォームとして、業界に新たな標準を提示するだろう。
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