山形市、高校生AI人材を育成へ 「AI甲子園」を支えるガバメントCF始動

2025年12月23日、山形市は高校生向けAI学習イベント「AI甲子園 in やまがた」を支援するため、ガバメントクラウドファンディング(GCF)を開始した。地方からAI人材を育成する取り組みとして、日本国内の教育×テクノロジー政策の動向として注目される。
山形市、AI甲子園支援で高校生の実践的AI学習を後押し
山形市が発表したのは、高校生デジタル人材育成支援事業の一環として行う※ガバメントクラウドファンディングの実施だ。市は、県内の企業・教育機関・自治体が連携する「やまがたAI部」に参画し、その活動を資金面から支援している。
今回のプロジェクトは、同コンソーシアムが主催する「AI甲子園 in やまがた」において、AIの最先端現場を体験する機会や学習成果を評価する場をより充実させる狙いがある。
寄附の募集期間は令和7年12月23日から令和8年2月28日までで、目標金額は400万円に設定された。
集まった資金は、AI甲子園で優秀な成績を収めた高校への副賞に対する補助金として活用される予定で、返礼品は設けられていない。支援の使途を教育目的に限定する点が、このGCFの特徴と言える。
「AI甲子園 in やまがた」は令和2年から開催されており、高校生がAI技術の学習成果を発表し競い合う場として定着してきた。
競技テーマでは画像認識技術を用い、将棋の盤面から駒数を正確に読み取る精度を競う。
}探究テーマでは各校が自由に課題を設定し、身近な社会問題や地域課題をAIで解決するアイデアを提示する形式となっている。
昨年度は県外や台湾からの参加もあり、地方発のAI教育として一定の成果を示した。
※ガバメントクラウドファンディング(GCF):ふるさと納税の仕組みを活用し、自治体が特定の事業や政策目的を示して寄附を募る制度。寄附者は共感する使い道を選んで支援できる。
地方AI教育の加速装置か 期待と持続性への課題
本取り組みのメリットとしてまず挙げられるのは、自治体が主体となり、AI人材育成を地域の将来を見据えた施策として明確に位置づけた点である。
GCFを活用することで、寄附者は使途を理解したうえで支援でき、教育分野に対する共感を起点とした資金の流れを形成する可能性がある。
地方においても高度なAI教育に触れられる環境を示すことは、若年層の学習意欲や挑戦を後押しする一因になり得る。
一方で、単年度の資金調達に依存する構造には慎重な検討が求められる。
副賞支援は成果発表の動機づけとして一定の効果が期待されるものの、指導体制の拡充や継続的な学習環境の整備まで踏み込めるかは現時点では見通せない。
寄附額が目標に達しなかった場合の運営設計も含め、制度の持続性は今後の課題と言える。
それでも、自治体がAI教育を前面に打ち出し、全国から支援を募る手法は、他地域にとって一つの参考モデルとなる可能性がある。
人口減少が進む地方において、AIを学ぶ高校生の存在は、将来的な産業基盤を支える人材層につながると見ることもできる。
山形市の試みは、地方創生とAI教育を結びつける先行事例として、今後の取り組みの進展が注目される。
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