伊藤忠テクノソリューションズ、AI要件定義支援「Acsim」提供開始 上流工程の標準化を狙う

国内SI大手の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)は、システム開発の要件定義をAIで支援する「Acsim」の提供開始を発表した。
生成AIを活用し、上流工程の標準化と効率化を図る取り組みである。
CTC、AI要件定義「Acsim」の提供を開始
2025年12月24日、CTCは、ROUTE06が開発・提供するAI要件定義支援ツール「Acsim(アクシム)」の提供を開始すると発表した。
Acsimは生成AIを活用し、システム開発における要件定義工程を支援するプラットフォームである。
要件定義は、顧客の要望を整理し、システムの目的や機能を明確化する開発初期の重要工程だ。
一方で、業務理解やIT知識、関係者間の合意形成といった高度なスキルが求められ、熟練担当者への依存や属人化が課題とされてきた。
Acsimは、企業ごとの業務知識や判断基準をAIに学習させることで、自社業務に特化した要件定義環境を提供する。
ヒアリング議事録やExcel資料などを基に業務フローを自動生成し、構造化された分析を通じて課題抽出を行う点が特徴である。
さらに、改善方針の提示、画面や機能のプロトタイプ自動生成、コスト削減効果などを含む稟議資料の作成、基本設計書の自動生成までを対象とする。
CTCは、Acsimの導入から運用定着、要件定義後のアプリケーション開発までを一貫して支援するとしている。
要件定義AI化がもたらす利点と課題
Acsimの活用により、要件定義プロセスが標準化されれば、担当者の経験差による品質ばらつきの抑制が期待できる。
業務フローやプロトタイプを短期間で可視化できる点は、関係者間の認識合わせを早期に進め、手戻り削減につながる可能性がある。
一方で、AIが生成する業務分析や改善案は、入力される情報や前提条件の正確性に強く依存すると考えられる。
業務理解が不十分なまま活用した場合、誤った前提を含む成果物が迅速に共有されるリスクも否定できない。
また、要件定義段階で扱われる業務データや経営情報は機密性が高く、AI活用にあたっては権限管理や情報統制が不可欠となるだろう。
運用ルールやガバナンス設計を怠れば、利便性と引き換えにリスクが顕在化する恐れがある。
今後、要件定義のAI活用が広がれば、上流工程は「属人的な作業」から「再現可能なプロセス」へと転換していくと考えられる。
その過程で、人には業務全体を俯瞰し、AIの出力を検証・判断する役割がより強く求められるようになるだろう。
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