LINEヤフー川邊会長が退任へ AI時代に向け「一個人」から再起動

2025年12月23日、国内IT大手のLINEヤフーは、代表取締役会長を務める川邊健太郎氏が2026年6月の定時株主総会をもって退任すると発表した。同氏は同日、自身のXで今後はAI時代を見据えた新たな挑戦に踏み出す意向を示している。
川邊会長、26年6月に退任 統合完了とPayPay黒字化に区切り
LINEヤフーは12月23日、川邊健太郎会長が任期満了により退任する方針を明らかにした。退任時期は2026年6月開催予定の第31回定時株主総会後で、それまでは取締役として現職を務める。
発表を受け、川邊氏は自身のXを更新し、経営者として14年、社員として26年にわたり同社に在籍したことに触れ、社員や関係者、ユーザー、株主への感謝を表明した。
会長在任中の成果として同氏が挙げたのは、LINEとヤフーの統合を円満に完了させた点と、決済子会社PayPayの黒字化を見届けた点である。これらを踏まえ、「経営者として為すべきことは一通り終えた」と説明した。
一方で、今後のLINEヤフーにおけるAI活用や事業のAI駆動化(※)については「後輩たちに委ねたい」とし、自身は経営の第一線から退く考えを示している。
また、在任中に取り組んだライドシェアなどの規制改革については、なお道半ばとの認識も示した。退任後については、一旦「身軽な一個人」になるとした上で、リスキリングではなくアンラーニングを重視し、AI時代に適応した新たな挑戦を模索する意向を明らかにした。将来的には「AIと自分の二人会社」のような形での起業にも言及している。
※AI駆動化:AIを補助的なツールとして使うのではなく、意思決定や業務プロセスの中核に組み込み、事業や組織を動かす前提とする考え方。人間の役割の再定義を伴う点が特徴。
AIと「二人会社」の可能性 個人が主役になる時代の光と影
川邊氏の構想は、AIを前提とした働き方や起業のハードルを引き下げる可能性を示唆している。高度な分析や開発、意思決定の一部をAIが担うことで、個人でも従来は組織でなければ難しかった事業に挑戦しやすくなる余地がある。
特に、経営経験を持つ人材がAIを「相棒」として活用するモデルは、スタートアップの在り方に変化をもたらす可能性を秘めていると言える。
一方で、デメリットやリスクも想定される。AIへの依存が進んだ場合、判断プロセスが見えにくくなり、責任の所在が曖昧になる場面が生じる恐れもある。また、成功体験のアンラーニングを掲げつつも、過去の影響力や発言が意思決定に影響を与え続ける可能性は否定できない。
さらに、個人とAIの協業モデルが、既存の社会制度や法規制とどのように折り合うのかは、現時点では明確になっていない。
それでも、インターネット産業の成長と成熟を30年にわたり経験してきた経営者が、次はAI駆動社会に個人として向き合おうとする姿勢は象徴的である。川邊氏の動きは、AI時代における「個」と「経営」の関係性を考える一つの材料になる可能性がある。
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